「お客様の確かなDX」を支える社内DXの重要性
OCEが進めるシステム導入、人材育成、そして情報発信
東京都に本社を置くシステム開発企業、大崎コンピュータエンヂニアリング(OCE)。千葉県内を中心に行政や企業向けの業務システムや情報通信インフラの構築を多数手掛け、現在は顧客向けのデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に力を入れています。
近年は「お客様のDX推進には、まず自分たちから」との考えのもと、3つの重要戦略を立て社内のDX化にも力を入れ推進しています。社内DXの推進を統括する事業推進統括部NB推進室長の森雄介さんに、具体的な取り組みから社内に起こった変化、見えてきた課題を伺いました。
■社内DX推進へ、意欲的な取り組みが継続中
––––自社内のDXでは具体的にどのような取り組みをされていますか?
事業推進統括部NB推進室室長・森雄介さん(以下、敬称略)
当社は「信頼とサービスを基本にお客様の確かなDXを実現する」を経営ビジョンに掲げ、その実現のため「リアルタイム経営の実現」「非知的労働時間の削減」「DX実現に向けた人材育成、確実な品質向上」の3つを重要戦略としています。
「リアルタイム経営の実現」では、以前から使っていたグループウェアを今年刷新します。ポータルサイトを再構築したり、チャット機能を入れたりすることでワークフローを新しくして、これまでのスケジュール管理や会議室共有をする機能から、社内情報の流通を良くするような、情報連携基盤的な位置付けに再構築をしています。
2番目の「非知的労働時間の削減」では、RPA(Robotic Process Automation)の導入を推進し、社内活用しています。例えば、営業の原価管理は仕入元帳と原価計算書のチェック業務を、これまでは事務担当が行っていましたが、RPAの導入でソフトウェアロボットによって自動化しています。
3番目の「人材育成、品質向上」では、OCEアカデミーという教育訓練専門の部署を立ち上げました。これまでは営業・SE・工事と部門ごとに人材教育が完結していましたが、OCEアカデミーの設立により、職種の垣根を超えて共通して習得してもらいたいスキルを学べるようになりました。共通スキルの42講座は動画として作成し、教育サイト上で閲覧できるようになっていて、全社員に必ず受講してもらう形をとっています。
––––社内DXの推進によりどのような効果が出ていますか?
森
「非知的労働時間の削減」であれば、原価管理などの営業事務、仕入れ登録などの購買事務にRPAを使い始めたことで生産性の向上につながっています。
「DX実現に向けた人材育成、確実な品質向上」では、OCEアカデミーの設立により、DX推進に必要な人材育成や、個人のキャリアに応じた学び直しの機会の増加につながっていると思います。各部門のプロジェクトマネージャーやDXを牽引できる係長クラスの人材を「現在の2倍」にする目標を立てて、新しい講座を随時検討するなど継続的な取り組みを実践中です。
■ポイントは「情報の伝え方」。DX成功事例の積極的な発信へ
––––社内DXの実践による将来的な目標はありますか?
森
お客様にどうやって効果的に製品、サービスの情報を届けられるかがポイントだと考えています。まだ数は少ないですが、お客様がDXを進めたことによる改善事例や社内DXで効果的だった事例を、ホームページなどを通じてお客様にお伝えしていきたいと考えています。
こうした事例紹介などを通して、今後はより多くお客様のためになる話題をお届けすることが目標の一つです。それをご覧になったお客様から、新たな業務のつながりができれば嬉しいですね。
––––お客様に情報を伝えていくためにどのようなことに取り組んでいますか?
森
私の部門では当社のホームページをよりお客様にアピールする業務も行っています。先ほどのお客様や自社DXの事例紹介など、情報発信については2022年から千葉日報デジタルさんと連携して進めています。
例えば、ホームページの閲覧数を増やす目的でGoogle広告を打っていますが、私たちにはその達成数値が妥当なのかが今ひとつわかりません。そこで、毎月の閲覧数や改善策などにご意見をいただいています。また、ホームページ内の誘導動線やホームページで何を発信していくかなど、方針や目的まで含めた総合的なアドバイスを受けながら改善を進めています。
––––今後、情報発信でどのようなことに取り組んでいきますか?
森
ホームページのリニューアルを考えていますが、単に全体を作り変えるのではなく、お客様と直接つながるような仕組みを持った形にできればと考えています。
例えば、現在、お客様からいただいたアンケートなどのフィードバックはまだ集約しきれていない気がしています。フィードバックの方法も営業社員が現地に行ってヒアリングするスタイルが常です。
こうした部分についてもホームページをうまく活用できないかと考えています。ホームページが、お客様との接点を増やし、量・質ともに良質なコミュニケーションの窓口となるようなイメージです。こうしたリニューアル部分でも千葉日報デジタルさんにアドバイスをいただきたいと考えています。
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大崎コンピュータエンヂニアリング様がご利用の情報発信支援サービス「ツタエル」の詳細は、こちらからご確認いただけます。
◆「ツタエル」の詳細はこちら。
市民サービスの向上につながる「自治体DX」の実現へ
システム構築からサポートまで一貫対応できるOCEの強み
大崎コンピュータエンヂニアリング(OCE)は、東京都に本社を置くシステム開発企業です。千葉県内54自治体に導入済みの総合行政ネットワーク「LGWAN」からのシステム提供をはじめ、千葉県を中心に、行政や企業向けの業務システムや情報通信インフラの構築を多数手掛けてきました。
近年では、コロナ禍で生じたテレワーク需要や国が進めるデジタル化の施策を受け、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に力を入れています。
千葉県の自治体がDXを推進するために、OCEがどのような形でサポートを行っているか――。現場を指揮する公共DX推進部長の薄井直毅さんに、自治体DXの最前線を伺いました。

■市民サービスの向上を目指し、総合的なDX化を提案
––––千葉県の自治体向けにどのようなDXサービスを提供されていますか?
公共DX推進部長・薄井直毅さん(以下、敬称略)
国がDXの全体計画を作って各自治体に推進を奨励している現状を踏まえ、当社ではその方針に沿って業務を進めています。
具体的には、市民が自治体に何か申請する際に、これまでは直接窓口に出向いて、そこで用紙等に記入することが一般的でしたが、今は皆さんがスマートフォンをお持ちでインターネット環境があるため、そこから申請できるような仕組みづくりを行っています。
さらに、自治体業務を電子化するには、データを安定的に流通させるシステムも必要なため、アクセスに関わるネットワーク機器やインフラ部分の導入にも積極的に関わらせていただいています。
––––自治体向けのDXで特に意識している部分はどのような部分ですか?
薄井
お客様である自治体からは、「窓口機能を順次デジタル化してほしい」「システムを入れた後の運用面も含めて周辺環境をデジタル化してほしい」といったご要望が多いです。
こうしたご要望にお応えするため、「当社のサービス提供を通じて市民サービスの向上を果たす」ことを念頭に、各種サービスの提供を行っています。
市民の方々がストレスなく行政サービスを利用するには、バックオフィスなど裏方業務の改善も必要です。そうした裏方業務のDXも一手に引き受け、総合的なデジタル化を目指しています。
システムの入り口部分を電子化しても、その後の工程で、結局紙で印刷する状況が生まれては元も子もありません。そうならないように、お客様個別の優先課題を把握しながら、トータル的なご提案を差し上げています。
––––自治体DXの分野でOCEの強みはどこにあると考えますか?
薄井
お客様が要望されるDXの切り口はさまざまで、全システムに関わるエンジニアから、ネットワーク部分の技術者、配線周りから構築する施工部門まで、全員の力が必要なことが多いです。こうした通信だけでなく、施工部分までサポートできるのは私たちの一番の強みだと思っています。
加えて当社にはデータセンターもありますので、大企業にはないスピード感を持って、情報・通信環境の整備から保守・運用面まで、総合的に課題に向き合うことが可能です。

■現場の課題を解決し、DXの真の価値を示したい
––––お客様からの反響で印象に残った声はありますか?
薄井
コロナ禍において、市民の方々が在宅勤務の自治体職員とコミュニケーションを取るには電話かメールだけにツールが限られていました。それが、最近では自治体向けのチャットツールの導入で、今まで以上に円滑なコミュニケーションが取れるようになった例があります。
また、会議を例にとっても新規のコミュニケーションツールの導入で、打ち合わせの質が上がったり、一箇所に集まらなくても十分に情報共有ができたりと、自由度が高まったことで、とてもお喜びいただいた経験があります。
お客様からこうしたお声を頂戴すると、DX化の真の価値は現場の課題解決にあると強く感じます。
当社では、自治体向けに「自治体ジャーナル」という情報誌を発行しています。そこでは先ほどのチャットツールの話など、お客様にヒアリングした導入効果の話題を事例として掲載しており、自治体の課題解決のお役に立てるよう情報共有しています。
––––顧客とのつながりを強化するために、どのようなことに取り組んでいますか?
薄井
当社は本社が東京ですが、お客様である自治体とのつながりは千葉県内が多くあります。また、コンピューターや通信関連のシステムを構築してサポートするのは得意分野ですが、「情報発信」に関しては自治体向けの情報誌を内製してはいるものの、ほぼ手探り状態です。
そこで2022年から千葉日報デジタルさんとタッグを組んで、情報発信の方法やホームページの活用法など、さまざまにご指導いただきながら取り組みを進めています。
当社のお客様の成功事例や有益な情報を上手に届けられるようにするには、まだ多くの学びが必要だと考えています。そこはメディアの知見があり、地元密着かつデジタル領域に詳しい千葉日報デジタルさんの強みを生かしていきたいと思います。
––––自治体のDX推進について、OCEとして将来の展望を教えてください。
薄井
自治体DXの実現は、自分たちだけではできません。現在、ITやシステム関連業界では、さまざまな新しい技術やソフトウェアが日々開発されていますので、それを自分たちの会社にも取り込んで、新しい事例に向き合いたいと考えています。
これまで自治体の中だけでの課題解決はなかなか難しい面がありましたが、民間の技術や知見をうまく組み合わせることで、自治体や市民の皆さんの生活が、より豊かになるDX実現のお手伝いをしていきたいです。
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皆さん、こんにちは。千葉日報デジタルの中島です。千葉日報デジタルは、千葉県の新聞社・千葉日報社の子会社として2021年に設立されました。
われわれのミッションは、新聞社が持つ情報発信ノウハウにデジタル技術を絡め、県内事業者の皆さんの情報発信力強化をサポートさせていただくことにあります。
本稿では「新聞社から見た中小企業のメディア活用法」をテーマに、皆さんが今取り組むべき情報発信について解説していきます。
◆中小企業あるある
皆さんの会社でこんな「あるある」はないでしょうか?
《せっかくいい新商品を開発したのに、なんで認知度が上がらないんだろう》
《もっとこのサービスの情報が広まれば、使ってもらえる取引先増えそうなのに・・・》
《事業内容を知ってもらえたら、いい人材の採用に役立つと思うんだけどなあ》
これらの問題は、「商品の認知度」「販路拡大」「人材採用」など異なる「あるある」に見えますが、実は、根本にある原因は「広報力の不足」といえます。
自社の商品・サービス・事業内容を広く周知できていないがゆえに、販売が思わしくなかったり、人材採用に困ったりする事態が起きているのです。
◆広報力を上げるには?
では、広報力を上げるにはどんな手を打ったら良いのでしょうか? さまざまな方法がある中で、ひとつの有効な方法は「メディアの活用」です。
なお、一口にメディアといっても、マスメディア(新聞・テレビ等)、ソーシャルメディア(ツイッター・インスタグラム等)など、さまざまな分類がありますが、本稿では「マスメディアの活用」に特化して話を進めます。
マスメディアを活用する利点はいくつかあります。ひとつは、マスメディアに取り上げられると情報が一気に拡散され、認知度の向上につながる点です。新聞やテレビは多くの閲覧者を抱えているため、地道な情報発信に比べ一度の掲載による情報拡散力は高くなります。
もうひとつは、歴史あるマスメディアは信頼性が高いため、そこに掲載されることで箔が付き、取り上げられた側の信頼性が高まる点が挙げられます。掲載された記事などは営業ツールとして売り込みに展開することも可能です。
マスメディアにうまく自社を売り込み、取材されれば「中小企業あるある」の課題が解決につながる可能性が十分あります。
◆メディア活用の落とし穴
ですが、メディア活用にもいくつか落とし穴があるので注意が必要です。ひとつは、取材する対象を決めるのはマスメディア側だということです。いくら自社の商品やサービスを売り込んでも、マスメディア側で「これは取り上げて広く周知すべきだ」と判断されない限り、取材されることはありません。
もうひとつは、マスメディア側に「ぜひ取材したい」と思わせるには、それなりの売り込むテクニックが必要だという点です。
単に「新商品を開発しました」だけでは、よほどその商品が画期的でない限りマスメディア側の触手は動きません。「○○という社会問題を解決するために新商品を開発した」「このサービスを利用すると千葉県の企業がこう変わる」といった意味付けを行い、さらにそれらの意味を含め、しっかりマスメディア側に伝えないと取材にはつながりません。
こうした一連の作業を行う場合、大企業であれば広報部が対応しますが、中小企業は広報部がない、または総務部門などと兼務といったケースが多く、対応が後手に回りがちです。こうした「誰が対応するか」という人的問題もクリアする必要が出てきます。
◆メディア活用のコツ
こうした利点と注意点を踏まえた上で、マスメディアを活用する際のコツを解説していきます。
ひとつめのコツは「記者クラブの活用」です。各自治体には記者クラブがあることが多く、新聞・テレビの記者が所属しています。当該の記者クラブに所属するのは多くそのエリアを担当する記者のため、うまく関係性が築ければ取材を依頼しやすくなります。
ふたつめのコツは「プレスリリースの有効活用」です。プレスリリースはメディアに対して発表したい内容を端的にまとめた資料のことで、取材を依頼する際に必須のアイテムとなります。
「どんな商品・サービスなのか」「いつ・どこで販売するのか」といった基礎的な情報から、「どうして開発したのか」「これを販売することで社会にどんな効果が還元されるのか」といった意味付けまでを簡潔にまとめることで、取材のきっかけをつかむのに役立ちます。
記者クラブに取材案内を出す際もプレスリリースを配布するのが一般的です。マスメディア側が取材をするかどうかの判断材料とする資料のため、商品開発と同じくらいの熱量で内容を充実させることが求められます。
◆デジタル活用も視野に
さらに、みっつめのコツは「デジタル活用を視野に入れること」です。マスメディアの活用は一昔前であれば、前述の「記者クラブでプレスリリースを配布する」のが一般的でした。
ですが、現在は「プレスリリースをウェブ上で配信する」というサービスも登場しており(PR TIMES等)、地域限定の記者クラブの枠を超えたプレスリリースの配信が可能となっています。
デジタルを活用してプレスリリースを配信する利点は、マスメディアへの情報提供と同時に、一般のインターネット利用者にも直接リリース内容を見てもらえることです。プレスリリースの内容がそのまま1枚のウェブページになるので、インターネット上での情報発信の効果も生まれます。
従来のマスメディア活用に加え、新たにデジタル活用を視野に入れることで、広報力強化の幅はぐっと広がります。以上3点がマスメディア活用のおおまかなコツです。
◆まとめ:解決の近道へ
ここまでの話をまとめます。
①中小企業は販路拡大や人材採用でさまざまに課題を抱えている。
②それらを広報力で解決できる可能性があり、マスメディアの活用がひとつの手段。
③マスメディアの活用は情報が一気に広がって販路拡大などにつながる利点がある一方、取材はマスメディア側の判断に委ねられるので注意が必要。
④マスメディアの取材を促すために記者クラブやプレスリリース、デジタルツールの活用を理解し、丁寧に実践する必要がある――となります。
また、本稿で解説した内容を中小企業が個々に実践していくには人的リソースの問題も出てきます。自社内に専門的な知見がなく、人的リソースも不足している場合は、地域の経済団体などに相談の上、必要なサポートを受けるのが解決の近道といえるでしょう。
(株式会社千葉日報デジタル 中島悠平)
※この記事は千葉県中小企業団体中央会様の会報誌「中小企業ちば」(令和5年4月号)に掲載されたものを転載しています。
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千葉日報デジタルでは、上記のような中小企業の広報や情報発信に関するお困り事の解決をサポートさせていただいております。
ご興味がおありの事業者様は、お問い合わせよりご連絡いただけますと幸いです。
発表者の魅力を引き出し、会場の一体感を演出した“新しい”創業イベント。千葉日報デジタルによる広報視点の「仕掛け」の裏側
創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」は、2022年10月の集大成となるビジネスオーディションをもって成功裏に終了しました。この活気ある創業者支援イベントを市原商工会議所と共に、裏側からリードしたのが千葉日報デジタルです。
今回は、ビジネスオーディションに至る3段階の支援ステップの内容から、事業実施の狙い、イベントを成功に導く仕掛けなどを千葉日報デジタルの事業キュレーター・中島悠平がインタビュー形式で解説します。
事業の「芯」を魅力的に見せる、伴走型のサポート
––––本番までには、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンの3段階のステップがありましたが、その具体的な内容を教えていただけますか?
ワークショップは2回行う予定で、全ての参加者に出席していただきました。初回は自己紹介を兼ねて、各々の事業を10分程度で語っていただき、互いの理解を深めました。
ほぼ雑談のような感じで終わりましたが、裏側の意図には、この場からある種の創業者コミュニティのようなものが生まれて育ち、街全体の活性化につながればという思いがありました。それもあって、可能な限りコミュニケーションを取る場を作りました。
そこから2週間ほど後に実施した2回目では、このステップの趣旨であるデジタルマーケティングを深掘りして、お客さんの集め方や事業の周知方法についてディスカッションをしました。
例えば、「○○○○で税務調査とさようなら」をテーマにプレゼンした税理士の西村さんは、ホームページを持っていましたが、税理士会のひな型を借りて作っており、もう少し自分のオリジナリティを出したいというご希望がありました。
「おもてなしアートで集客・接客向上」の坂本さんはインスタグラムを使っていましたが、「自分の顔を出すのは恥ずかしい」と話していました。一般的なアーティスト兼代表という方は、自らがインフルエンサーになって、顔も作品もアピールすることがよくあります、というアドバイスもしました。
一方、「市原の太巻き寿司を世界へ」をテーマにプレゼンした上田さんは、10年以上太巻き寿司の料理教室を運営していた結果、教室のホームページのSEO上の価値が上がっていたことが、お話ししてわかりました。
––––そこから個別相談に移って、さらに事業を磨くわけですね。
はい、ワークショップは本当に“さわり”なので、全4回の個別相談を通して各参加者の事業を深掘りし、より魅力的に見せる工夫を施していきました。
個別相談の初回は、まず「アイデアの先鋭化」から始めます。皆さんそれぞれ今の事業に思いはありますが、今回は最終的に8分間のプレゼンに収めなければいけないため、事業をいかに魅力的で、かつ分かりやすくまとめられるか、に頭をひねりました。
例えば、「日本初、高性能ベビー向け製品を発表!」の石井さんにはBtoBの路線からBtoCへの転換をご提案したり、チョークアートの坂本さんにはサブスク型モデルのアイデアをお出ししたりしました。個別相談は1回1時間しかないため、初回は千葉日報デジタルの経験とノウハウをフル活用し、先鋭化できそうなアイデアをまとめあげました。
2回目以降は、初回でまとめたアイデアをもとに、事業を具体化しつつ、プレゼンを見越して「どう見せるか」も検討していきました。皆さんスライドを使ってプレゼンするため、個別相談の中で写真の取捨選択や原稿のストーリーなどのブラッシュアップも行いました。
そして、最後のステップがプレゼン対応レッスンです。当初よりビジネスオーディションでは、会場に50名ほどの来賓を呼ぼうと市原商工会議所側と合意していました。それも一般のお客さんではなく、金融機関関係者、地元でご商売されている方、創業者の先輩など、BtoBになる方たちです。そこで「見せる」という意味では、こういった方々に刺さって、自分たちの商売を次につなげていけるような内容にすることを一番に心がけました。
例えば「木こり花澤 山を守る地域密着型SDGsビジネス」の花澤さんは、当日の仕掛けとして、普段の作業服姿でチェーンソーを持って登場する演出を施しました。まず見た目のインパクトで「木こり」というプレゼン内容に興味を持ってもらう狙いです。
また、「人事の力で業績アップ」の村山さんは、自身がエネルギッシュで内容が盛りだくさん過ぎたため、もう少し要約して核を決めましょうとアドバイスさせていただきました。
事業の芯を深掘りすることは大事ですが、それをどう伝えるか、どう見せて心を掴むかまで含めて、私たちで色々とアドバイスさせていただいたのが、個別相談とプレゼンレッスンです。
今回のビジネスオーディションは、経営計画や売り上げ目標を計画書的に具体化することよりも、プレゼンとして面白いかどうかが重視されたイベントです。事業の深掘りやプレゼンのレッスンは、当然そのゴールを意識してつくり込むことになります。
広報的な視点から、イベントに「一体感」を仕掛ける
––––オーディションの参加者は、マーケティングの総合的な視点が養われそうですね。
今回のイベントの裏のテーマは、広報宣伝の考え方や骨格を知って、体得していただくことにあります。3つのステップも、今回に限ればビジネスオーディションという場に向けて、自分達の事業をブラッシュアップする作業ですが、実は、やっていることは広報宣伝を組み立てるプロセスと全く同じ構造です。
イベントのゴールに向けた作業を違う形で横展開すれば、すぐにプロモーションスキルとして活かせる仕掛けが、各ステップには施されています。参加した方々は、この先、新規開拓しようとすれば、いつか「自分の強み、使用する媒体、伝え方」といったマーケティングの課題に直面するはずです。その時に今回の経験が必ず活きてくると考えています。
––––うちわを使った採点方法が面白かったです。
今回のビジネスオーディションは、うちわの裏表で「興味があります」と「もっと聴かせて」という2パターンを出せるようにしており、いわゆる“審査会”ではありません。これは商工会議所側との序盤の打ち合わせで、「参加しやすいフランクな雰囲気」を作るにはどうしたらいいかと考えた結果です。
こうしたオーディションには大体、審査員がいて、お客さんは蚊帳の外になりがちですが、今回はそうではなく、皆で彼らを応援する空気感を醸成したい思いがありました。
加えて、私たちの最大の強みである、「広報の視点から事業やイベントを組み立てる」視点も反映されています。イベントであればメディアに掲載された際に写真映えして、いかに「面白そうなイベントだな」と思ってもらえるかが肝です。そこから逆算して、会場に一体感を生んで、華やかさも演出できるツールとして、うちわの採用となりました。
地域の商工会議所との連携で、周囲を巻き込むイベントを育てる
––––初のイベントで、商工会議所との連携面はいかがでしたか?
当日はかなり大規模にやらせていただき、市原商工会議所の皆さんの準備には頭が下がる思いです。これ以外にも、参加者のパワーポイントの細かい設定や原稿修正の実務作業など、基礎的なバックアップを確実にしていただきました。
そのおかげで私たちは、参加者とのディスカッションやアドバイスに集中できました。市原商工会議所の皆さんは事務的部分、私たちは事業の深掘りと、うまく役割分担できたことで、お互いの強みが発揮できたと感じています。
––––周囲からの反響はいかがでしょうか?
来賓の皆さんからは、とてもいい発表だったとお褒めの言葉をいただきました。千葉日報デジタルとしてもこうした試みは今回が初ですが、期待以上の手応えです。
加えて、会場に設けた発表者用のブースも大好評でした。ブースにはプレゼン終了後から結果発表までの合間の30分程度に巡ってもらう想定でしたが、太巻き寿司を試食したり、チョークアートの作品に触れたりと、みなさんが積極的に立ち寄ってくださいました。
参加者のみなさんには、あらかじめブースにお客さんが来た際に、何かお渡しできる資料を必ず用意してくださいとアドバイスをしていました。単なる事業のお披露目の場ではなく、そこでお客さんを獲得するくらいのつもりで臨むための仕掛けです。
結果的には、当初もくろんでいたコミュニティのようなものが生まれて、地域の事業者の方が発表者である創業者を遠くから見守るのではなく、近しい関係を持てる場が作れました。
––––最後に、イベントを終えた率直な感想と今後の目標を教えてください。
私たちの仕事は本番前の最終リハーサルまでで、本番になってしまえば、あとは発表者が頑張るしかありません。ですが、当日の会場に行って皆さんのプレゼンを見終えると、ほっとした気持ちと、しっかりと発表できた喜びで、泣きそうになるぐらいに感動的でした。
これはやはり、この3ヶ月間の密度の濃さの表れですし、何より登壇した6名の方が、本気で頑張ろうとやってくださったことへの感謝の思いでもあります。
私たちの強みは、プロモーションや広報において「どういう風に見せるか」という視点から、逆算して事業や商品・サービスを組み立てることです。今回のイベントもこの視点を持って臨んだことで、成功に導くことができました。
ビジネスオーディションの終了後、発表に参加した創業者の何名かはアフターフォローのサポートも始まっています。プレゼンで発表した内容をより具体化し、実際の収益につなげていく意欲があり、これからさらにサポートを強化していきたいと考えています。
今後も、今回の市原商工会議所さんとのご縁を大切に、引き続き市原市での支援事業に関わらせていただき、創業者や既存事業者の発展に貢献していきたいと思っています。
市原商工会議所の創業者サポート体制が大きく進化。千葉日報デジタルとの協業で、継続的な販促支援・コミュニティー化支援につなげる
市原商工会議所が千葉日報デジタルと協業して進めてきた、創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」。その総決算のビジネスオーディションは、盛況のうちに幕を閉じました。
成功の裏には、マーケティング視点を取り入れた双方向のコミュニケーションや、事業の「核」の可視化を心掛けた取り組みがあったようです。
今回は当オーディションを陰ながらサポートした市原商工会議所の3名の方にお集まりいただき、プロジェクト発足の経緯から、千葉日報デジタルとの協業のメリットまで、お伺いしました。
“継続性”を大切に、新・創業支援事業を開始
––––ビジネスオーディションを開始した経緯をお聞かせいただけますか?
市原商工会議所 産業振興部 部長・藤田 智成さん (以下、敬称略)
市原商工会議所は日頃創業支援に力を入れており、過去5~6年間は、起業家を募ったフェスタや創業スクールなどのセミナー形式の催しを行っていました。
しかし、近年はコロナ禍もあって、地域の経済が停滞して廃業が増えてしまっています。やはり、地域経済の活性化には、創業による新陳代謝をしていかなければならないため、3年前には「創業からの成功ストーリー発表会」を開催しました。
これは創業10年目くらいまでの、業績が伸びている経営者の方に体験談を発表してもらう試みで、発表者のビジネスと私たち商工会議所の取り組みを知っていただく狙いがありました。
結果的にはこれが成功を収めて、こうした発表の場を年間通してできないかと、千葉日報デジタルさんにご相談したことが始まりです。
––––今事業では、単発で終わらない継続性も大切にされたそうですが?
藤田
当初は資金調達のチャンスを提供したいと考えてピッチイベントの開催を予定していましたが、ビジネスパートナーを集めるだけでは単発で終わってしまう懸念があったため、議論を重ねた結果、しっかり前準備を整えられるオーディション企画の流れを考えました。
商工会議所の業務と言うのは会員の経営者を事務的にサポートすることが多いです。手続きが終われば段々と関係が薄れてしまう、この習慣を変えていかなければならないぞと。そこで、段階を踏んで参加者を成長させて、仲間意識を醸成する、「交流会+発表イベント」のイメージで構築しました。
デジタルを駆使した販路拡大&人材育成スキル、千葉日報デジタルと組んだわけ
––––ビジネスオーディションを進めるにあたり、千葉日報デジタルと連携された狙いはどこにあるのでしょうか?
藤田
私たちは事務的な対応を得意にしている反面、販路拡大スキルは不得手です。そこで外部の手を借りようとなった際に、広告宣伝のメディアと組みたいと思いました。
ちょうど時を同じくして、千葉日報さんが新会社である「千葉日報デジタル」を立ち上げるとお聞きして、これはぜひお願いしたいと思いました。
実は他にも数社の候補がありましたが、やはり人材やビジネスを育てていこうという「公共性」、さらに今後DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されるビジネス環境の中で「デジタルマーケティング」の部分で非常に知見をお持ちですので、最終的に千葉日報デジタルさんにお願いすることにしました。
––––具体的に印象に残っているサポートはありますか?
藤田
千葉日報デジタルさんからは、最初の頃の打ち合わせで、「単発のセミナーを辞めましょう」、「もう少し相手の事業を深掘りできる事業をしませんか」とご提案いただいてこの話が始まりました。ここは自分たちでも課題に感じていました。
今回はビジネスオーディションというゴールがあって、それに向けて何が必要かを探る過程で、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンという三段階の流れが確立されました。
これも千葉日報デジタルさんのご提案です。こうしたイベントを実施するにあたって、長期計画を練る経験が私たちには足らなかったため、ゴールから逆算した様々な段階を設定いただけたことはありがたかったです。
事業拡大に向けた、市原商工会議所のバックアップ体制が進化
––––千葉日報デジタルとの協業で、実感したメリットを教えてください。
市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・田村 光由さん (以下、敬称略)
これまでは市原商工会議所に相談に来られる方への対応は、その場限りで途切れてしまうことが多かったです。それが、今回のオーディションでは一つのことが終わったら次のことへと続けていく支援のやり方や、私たちでは思いつかなかったアイデアの提示の仕方などを、千葉日報デジタルさんから学べたことは良い機会でした。
組織的な部分では、継続した支援のスケジューリング、次はこれをやってきてくださいという課題の出し方、設定の仕方はとても勉強させていただきました。これは例えば、相談者の方が補助金の相談でいらした場合でも、逆算したスケジューリングは活きるのではと思います。
市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・松尾 隆大さん (以下、敬称略)
相談者の方と個別でお話しすることは多かったですが、経営やこんなビジネスをやりたいというご希望を、色々な事業者が集まる中で話し合う場はこれまでありませんでした。
特に今回の参加者は業種的にバラバラで、そんな皆さんが何度もディスカッションをする過程で、自分の強みや、それは活かせるのでは?といった意見が飛び交って、その熱量がコミュニティーの形成に繋がったのかなと思います。
加えて、個別相談での千葉日報デジタルさんのアイデアの引き出しの多さにも驚かされました。各々が業種もやりたいことも違う中で、しかも限られた時間内に様々なご提案をしていただき、そういう部分は、商工会議所にはないところだなと実感し、今後取り組んでいかなければならないと感じました。
藤田
市原商工会議所では、年に1度創業スクールというセミナーを実施してきました。しかし、創業計画でフォローできるのは資金調達までで、その後の課題は結局販路拡大です。創業者の方がマーケットという大海原に放り出される中で、私たちには支援する方法が足りていませんでした。
そこを、創業スクールからビジネスオーディションの流れを作ることで、市原商工会議所がバックアップできる体制ができたと思っています。
そのため、私たち職員もこれまでになく、各員が奮闘したと感じます。従来は、職員が決められた業務を各々で行っていましたが、そうではなく“皆でゴールに向かっていく”経験をさせていただけたことは、かけがえのないものだと思います。
ビジネスオーディションを皮切りに、市原市に産業の支援拠点を創出
––––ビジネスオーディションは今後も継続予定ですか?
藤田
このスタイルでやりたいです。当初はピッチイベントと呼称していましたが、市原市では時期尚早という気がして、名前を「ビジネスオーディション」に変えた経緯があります。参加者も投資家を募るのではなく、これは交流会の発展系のような“仲間を増やす”イベントです。
この空気感は審査の手法にも表れていて、良し悪しを判断する「審査員」を置くのではなく、会場の皆さんが聞いた後に「興味がある」「もっと聴きたい」と書かれた団扇(うちわ)を上げてもらう評価方法にしました。昔のアイドルオーディションのようなイメージで、これも皆で話し合っている中で生まれたアイデアです。
あまり投資的な側面は出さずに、市原市の地域性を大事にしていけば、次回も多くの方にご参加いただけると考えています。
––––市原商工会議所として、今後力を入れていきたことを教えてください。
田村
千葉日報デジタルさんと組ませていただいたことで、これまでは創業スクールで終わっていた支援方法に次の段階が見えました。そこで、さらに次のステップを考えても良いのではと思います。今回は販路拡大といっても、あくまで市内の事業者の方がメインでしたが、市外、そして県外へと広げていくステップを、私たちが用意できたら意義のあるものになると考えています。
藤田
当所は、市原市とともに、2022年10月に、サンプラザ市原に産業支援センターのサテライトをオープンさせました。その結果、創業者の方の相談が以前より増加しており、頻繁に行われる小セミナーへの参加者も増えています。この形をこれから継続、拡大させていきたいです。
もちろん、ビジネスオーディションにも引き続き注力して、参加事業者さんには販路拡大、雇用創出とステップを踏んでもらいたいです。そしてその先に、私たちが取り組む表彰制度「市原で大切にしたい会社」にエントリーできるような企業に育って欲しい、これが私の考える未来像です。
松尾
これまで市原商工会議所では単発のセミナーが多かったので、今後もビジネスオーディションのような少人数のコミュニティーが生まれる事業を推進したいです。そうした小コミュニティーをいくつも作って、その方々が産業支援センターを拠点に集まって、ビジネスの話をする流れになれば、この場所も活性化します。
また、産業支援センターをコワーキングスペースとして、今以上に広く利用してもらうことや、少し角度を変えてSDGsの括りで事業者を集めたり、工夫の方法はまだまだあります。あの手この手で幅広い人材を集めて、グループ間の繋がりを促進して、いろいろな事業者さんが日常的に集まってくれる場になればと思います。
––––ありがとうございました。
ビジネスオーディションを経て、飛躍のきっかけをつかんだ6事業者。その舞台裏にあった、千葉日報デジタルによる充実のサポート体制とは?

千葉日報デジタルと市原商工会議所のコラボレーションで進められてきた、創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」。その総決算のイベントが、2022年10月に開催されたビジネスオーディションです。
多種多様な事業を志す6事業者が、3ヶ月あまりをかけて自らの事業をブラッシュアップし、プレゼンテーションを行いました。
今回は、当オーディションに参加した4名の方にお集まりいただき、プロジェクトへの参加で感じたメリットや、今後の展望を掴むきっかけとなったサポート体制など、ざっくばらんに語っていただきました。
【ビジネスオーディション参加者4名】
・Guuu animal chalk art代表・坂本沙矢加さん 《「おもてなしアート」で集客・接客向上》
・ライフデザイン事務所代表・村山寛樹さん 《人事の力で業績アップ!》
・花澤基工代表・花澤俊之さん 《木こり花澤 山を守る地域密着型SDGsビジネス》
・ユニペン代表取締役・石井亮介さん 《日本初、高性能ベビー向け製品を発表!》
様々な事業の種と思いを胸に、市原市「市原未来創業プロジェクト」がスタート
––––新規創業者や事業転換者を対象に、2022年7月から始まった本プロジェクトですが、参加したきっかけを教えてください。
ユニペン代表取締役・石井亮介さん
市原商工会議所さんから連絡をもらった時には、SDGsに関係した企画だと勘違いしていました。行ってみると他の参加者は創業したての方がほとんどで、場違いかなとも思いましたが、皆さんと知り合いになりましたし、その環境で数ヶ月一緒にやってみようと取り組みました。
Guuu animal chalk art代表・坂本沙矢加さん
私は2022年の5月に創業したての時期で、今後市原でどういう活動をすれば良いかを市原商工会議所さんに相談している最中に、「オーディションには色々な方が集まるので勉強になるのでは」とお誘いいただきました。
花澤基工代表・花澤俊之さん
開業のきっかけは、2019年の市原商工会議所さんの創業スクールへの参加です。事業の準備をしていたところコロナ禍に遭って、2020年は営業活動がスムーズにできませんでした。そんな時に、デジタルマーケティングを含んだビジネスオーディションという企画を知って、心機一転して動き始めるには良いポイントになるのでは、と思って参加しました。
ライフデザイン事務所代表・村山寛樹さん
私は2022年にサンプラザ市原で行われた市原商工会議所さんのSDGsのイベントに出席していました。そこで、今後はビジネスピッチも実施すると伺って、これはチャンスだと思い自ら参加をお願いしました。
(※以下、敬称略)
活発なディスカッションで得る、自らの強みと弱み
––––本プロジェクトは、伴走型の事業のブラッシュアップが特長でした。ディスカッションも盛んに行われたようですが、参加したことによる気づきやプラス面はありましたか?
花澤
自分の得意な設計技術は、精密板金といった細かい図面を描くことで、そこを打ち出す考えでした。一方で、家業は代々受け継いできた“木を切る技術”です。
これは地元でも需要があって、特殊な技術を持った木こりだという話をしたら、千葉日報デジタルさんからは「木こりで行きましょう!」と後押しがありました。色々な工事の請負をする中で、自分の伐採や木こりの技術をもっと押し出した方がウケが良いのではと、見出していただきました。
坂本
この企画を通して、普通に営業活動をしても絶対に会えない、話す機会がないだろうという業種の方々と知り合えたことが財産です。また、様々なプログラムを一緒に受講する中で、他の業種から見るとこういう部分がビジネス的に活かせるよ、など多くのアドバイスを頂けたことが本当にプラスでした。
石井
当社は塗装、塗料で45年以上やってきた企業で、私は先代を継いで10年近くになります。この企画のために、新しい技術で作った遮熱シートを持ってきました。業界的には今までにない動きで面白いだろうと思いましたが、メディア的には特に目新しさがないと指摘されました。個人的には受ける感触があったので、このギャップはショックでした。
村山
プラス面の一つは、自分の仕事を認知していただけたことです。実際に市原市役所の職員の方に、オーディションの一週間ほど前にSNSでメッセージをいただいたり、元から繋がっている方も「村山って意外に喋れるんだ」と分かってもらえたりといったプレゼン効果があったと思います。
千葉日報デジタルによる親身なサポートで、事業内容が先鋭化
––––ビジネスオーディション本番に向けては、デジタルマーケティングワークショップ、個別相談、プレゼン対応レッスンと3つの準備段階が設けられていましたが、その期間のサポートで役に立ったことはありますか?
石井
最初のワークショップでは皆で集まって、自己紹介に互いの事業や経歴を発表する場がありました。そこで出てきた話の中から事業の種を深掘りして、その後個別相談に進みます。自分で考えていたアイデアは、遮熱シートを工場の屋根に取り付けるBtoBビジネスでした。
しかし、ワークショップや個別相談の中で、インパクトを踏まえると「BtoCへの転換」だろうと。私たちは95%がBtoBでやってきた会社だったので、これをBtoCに活かすにはどうすべきかを打ち合わせの中で話し合って、ベビーカーへの転用にたどり着きました。自分の考えが変わっていく過程が面白かったです。
坂本
私のチョークアートは手書きで、制作にも時間がかかるため、そもそもビジネスやお金にしづらい職業形態です。2回のワークショップを経た後も、ビジネスへのうまい転換方法が自分の中で見えませんでした。
流れが変わったのは、千葉日報デジタルの方々と個別相談をした後です。雑談のように私の過去の話から今の気持ちまでをフランクに話し、出てきたワードをアイデアとして引き出してもらう中で、徐々にビジネスにできるかもしれない感触が得られました。
特に飲食店や企業受付に設置する「おもてなしアート」を、月額利用で貼り替え対応できる、サブスクリプション型のモデルにしようというご提案は衝撃でした。このアイデアが出た時の「これしかない!」という盛り上がり感は忘れられません。本当に一人だったら思いつかなかったアイデアです。
花澤
自分の場合は業務内容の引き出しが多すぎたようで、最初に千葉日報デジタルさんに「もっと絞りましょう」と言われました。そしてどんどんフォーカスしていって、「切る」だけのプレゼンで8分は長いなと。
そこで自分たちがやっている、ロープで登って木を切るロープアクセスや特殊伐採の手法を、現場で撮った写真を繋いで動画にしようという流れができました。そうすれば話して説明するよりも、皆さんにより理解してもらえます。
あとは、木を切っていますだけで終わらないように、伐採工事の単価設定や森林の継続管理の提案など、ビジネス部分のモデルプランをキャッチボールしながら構築してもらいました。脱線しそうになると、的確に本線に戻していただいたことが印象深かったです。
石井
実際に木の上で作業されている花澤さんの視点で撮った動画は、こんなに高いのかとインパクトがありましたね。デジタル化のおかげだと思います。
村山
花澤さん同様、私もたくさん言いたいことがあったため、内容の取捨選択に感謝しています。皆さんもおっしゃっていましたが、すごく和やかな雰囲気で会話ができて、プレゼンもディスカッション形式で組み立てられたのが、とてもやりやすかったです。
あとは、プレゼンを組み立てる時の考え方なども教わって、自分の武器が増えた実感があります。今回のオーディションの観覧者の年齢層、人数、会場の雰囲気などを踏まえて、いきなり人事支援の内容を説明するよりも「人事の悩みってありますよね」という投げかけから始めるなど、導入部分のレベル感まで緻密にシミュレーションしました。
プレゼンの練習は4日間ありましたが、これが1〜2日間であればおそらくここまで完成していなかったと思います。本当に濃厚で、有意義な3ヶ月間でした。
多くの反響を力に変えて、新たなビジネスと地域貢献に踏み出す
––––今回の経験を、今後のビジネスにどのように活かそうとお考えですか?
村山
これまでは人事のサービス業、コンサル業と実務の代行をしていましたが、ビジネスオーディションを通して、講師として話すことで自分の価値提供に繋げたい気持ちが芽生えました。
これはプレゼンの考え方やどう相手に伝えるかなど、オーディションで学ばせていただいた知識を使いたいなと思っています。既に営業は始めていますが、その際にもYouTubeのビジネスオーディションのチャンネルリンクを申込書に添付して、活用させてもらっています。
石井
私も本番の模様をYouTube配信で流すなど、デジタルツールを駆使した施策は面白いと思いました。今回の製品ではベビーカーへの取り付けを想定していますが、遮熱剤のメーカーも発表の配信を見てくれていたようで、収縮性や耐久性といった残りの実験には前向きです。
ただし、発表終了後に問い合わせが来たのは屋根に取り付ける方でした。これはある意味、当初の思惑は間違いではなかったということです。お客様に関心を持っていただく目的は達したのかなと、反響自体はとても嬉しかったです。
花澤
オーディションが終わった後に、林業の世界がわかったとか、入り口として勉強になりましたと言ってくれる方がいて、設計ではなく「木こり」でピックアップしてもらって正解でした。それに加えて現在、特殊伐採の世界では挑戦的な若手が全国的に増えています。そういった方々に、チェーンソーで木を切ることを入り口に林業の勉強をしてもらいたいです。
林業は業界的にはニッチなので、特殊伐採をアピールすることで、造園業者の「剪定から伐採へ」の流れが作れればいいなと思います。林業に流入する人材が増えれば森林の整備にもつながりますし、これは少し大きな夢ですが、見放されつつある地方の魅力が再発見、活性化されるのではと期待しています。
坂本
今回のオーディションを通して、私が思ってもみなかったアイデアや、逆に私がやりたかったアイデアの展開を示唆していただき、おかげさまで発表後には何件も手書き看板の引き合いをいただいています。加えて、街を活性化するのに手書きアートをお願いされたり、市原市内の高校で生徒さんたちに教えたりといったお話もいただいています。
私が発表したサブスクリプション型のモデルが広まれば、同じ業界の手書きアーティストさんへの活路にもなると思います。ビジネスに展開していくのと同時に、地域の方と老若男女を問わずに、自由な時間、息抜きの時間になるようにチョークアートを広めていく活動もしたいです。せっかく市原で活動しているので、いただいたアイデアは全て試してみて、地域に還元できれば嬉しいです。
––––ありがとうございました。

「市原未来創業プロジェクト」とは?
「市原未来創業プロジェクト」は、市原商工会議所と千葉日報デジタルが2022年7月から共同で進めてきた創業者支援のプロジェクトです。対象は、市原市内で創業して間もない事業者、または新規事業の立ち上げや事業転換を準備している事業者。千葉日報デジタルが専門家として伴走型でサポートし、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンを行い、参加者は事業の磨き上げからプレゼン力の向上までワンストップで学んできました。

「市原未来創業プロジェクト」では、ワークショップや個別相談などを取り入れることで専門家と事業者が「狭く・深く」関係を持ち、伴走型でビジネス成長を目指していく形を採用しました。今回のプロジェクトを、「狭く・深く」型の事業者(創業者)支援のモデルケースとして確立させることで、この形式を横展開していき、さらに地域の事業者(創業者)の本質的なビジネス成長につなげる狙いがあります。
「ビジネスオーディション」とは?
約3カ月のプロジェクトの集大成となったのが「ビジネスオーディション」。各社8分の持ち時間でプレゼンを行い、会場の来場者約50人がプレゼン内容やパフォーマンスを審査しました。審査には「興味があります」、「もっと聴かせて」が表裏に書かれた「うちわ」を使い、それぞれ1点、2点が入る形で採点しました。
今回の「ビジネスオーディション」では、「ビジネスプランの優劣を競う」のではなく、「新たな顧客・取引先と出会う」ことを目的としてプレゼンを組み立てたのが特徴です。会場には各社ブースを設けていたことから、出場者は全員、プレゼンで来場者に興味を持ってもらい、ブースで個別の商談につなげるという戦略を採りました。
創業間もない事業者にとって、新規顧客・新規取引先の獲得は必須です。今回の「ビジネスオーディション」では、出場者が順位付けの「名誉」を目指すのではなく、実際的なビジネス環境を整える「実利」を目指すことを大きな狙いとしていました。
「ビジネスオーディション」の結果
プレゼン後の「うちわ」による来場者の審査の結果、各賞は以下の通りとなりました。【1位(商工会議所会頭賞)】
◆Guuu animal chalk art代表・坂本沙矢加さん《「おもてなしアート」で集客・接客向上》
【2位(千葉日報社賞)】
◆ライフデザイン事務所代表・村山寛樹さん《人事の力で業績アップ!》
【ベストアクション賞】
◆花澤基工代表・花澤俊之さん《木こり花澤 山を守る地域密着型SDGsビジネス》
◆ユニペン代表取締役・石井亮介さん《日本初、高性能ベビー向け製品を発表!》
◆サンパーク取締役・上田悦子さん《市原の太巻き寿司を世界へ》
◆西村直樹税理士事務所代表・西村直樹さん《○○○○で税務調査とさようなら》
1位に輝いた坂本さんは、看板アート制作の経験を生かし、飲食店や企業受付に設置して集客・接客向上につなげる「おもてなしアート」事業を提案。単に1店ずつ制作するのではなく、月額定額で利用でき、季節ごとに看板を張り替えるサブスクリプション型のモデルが評価を受けました。
2位の村山さんは、人材コンサルティングの経験から、中小企業向けの人事問題解決の仕組みを提案。「採用が思うようにいかない」「なかなか人材が定着しない」という人事面の課題解決を、会社業績のアップにつなげる方法を紹介しました。

他の出場者も、普段の作業服姿で登場したり、ブースで試食を用意したりと工夫を凝らしたプレゼンを行いました。プレゼン終了後には来場者がブースを訪れる交流会も行われ、活発な意見交換・情報交換が行われました。
会場には市原商工会議所(主催)の榊原義久会頭、市原市(後援)の小出譲治市長をはじめ、創業支援に詳しいシンクタンク幹部や金融機関幹部ら来賓も多数参加。「素晴らしいプレゼンで感動したし、事業として可能性もある」と好評でした。
今後の展開
「市原未来創業プロジェクト」の第1期は、「ビジネスオーディション」の開催で終了となりました。ただ、創業者のビジネス展開はこれから本番です。市原商工会議所と千葉日報デジタルは、引き続き個々の事業者のビジネスの深掘りに向け、マーケティング視点やデジタルを活用した情報発信などのサポートを続けていきます。市原市の創業支援においてワンストップ相談窓口を担う市原商工会議所は、「創業しやすい街いちはら」というスローガンを掲げ、創業者の支援を手厚く行っています。市原商工会議所と千葉日報デジタルは、引き続きこうした取り組みの実現に向け、タッグを組んで事業等を展開していく予定です。
この記事は、千葉日報デジタルが2021年度に情報発信を全面的にサポートさせていただいた臼井地区商店会連合会様(千葉県佐倉市)の取り組みをまとめたものです。
千葉日報デジタルと包括提携を結ぶ千葉県中小企業団体中央会様の会報誌「中小企業ちば」(令和4年4月号)に掲載の内容を転載しています。

デジタル化の罠
「83.4%」。この数字、何の数字かわかりますか? 実は日本人全体でインターネットを使っている割合です(2020年、総務省)。年齢別にみても、10~50代で9割超、60代で8割超、70代で約6割がネットを使っています。
ネット利用が増えつつある背景もあって、2021年9月にデジタル庁が設立されるなど、国を挙げての「デジタル化」「IT化」「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」といったデジタルを活用した取り組みがさまざまな場面で進んでいます。
ですが、現状、事業者や組合の皆さんはどこまで、この「デジタル化」に取り組めているでしょうか? 日本人の8割超が当たり前のようにインターネットを使いこなす時代にもかかわらず、なかなか事業そのものや事業の周知・広報PRにネットをはじめとするデジタル技術を活用できていない先は多いのではないでしょうか?

本稿でご紹介する臼井地区商店会連合会は、数年前から「デジタル化」をキーワードに研究会を続けてきました。毎月研究会を実施する意欲的な姿勢からさまざまな成果が生まれてきましたが、一方で「デジタル化の罠」とでもいえる事態にも直面していました。
その「罠」とは、簡単にいえば「デジタルを活用することが目的になってしまっている」状態です。「デジタル化の罠」にはまってしまうと、本質的に取り組まなければならない課題解決を忘れてしまいがちです。
本稿では、臼井地区商店会連合会が2021年度の研究会を通して、どうやって「デジタル化の罠」から一歩抜けだし、新しい視点でデジタル化と向き合い始めたかをご紹介したいと思います。
新たな展開:コミュニティスペースをつくる
臼井地区商店会連合会は、佐倉市の京成臼井駅前のショッピングセンター「レイクピアウスイ」のテナント店舗と、駅前商店街「臼井王子台商店会」からなる組織です。これまでに、レイクピアウスイ館内へのWi-Fi導入、インバウンド向け地域観光情報サイト「グローバルウスイ」の開設など、デジタル施策に力を入れてきました。
2021年度はデジタル施策だけにとどまらない新たな展開として、空き店舗スペースを活用したコミュニティスペースの新設を目指して研究会をスタートしました。

このスペースは単なる「市民の憩いの場」の機能だけでなく、多様な人材の交流拠点、地域ビジネスの活動拠点などに成長することを目的としています。また、リアルとバーチャル、オンラインとオフラインがつながるプラットフォームのような機能も持たせられれば、との希望と期待もあります。
スペースの新設にあたっては、千葉県中小企業団体中央会のサポートにより、経済産業省の事業再構築補助金を獲得。「うすいコミュニティひろば」の名称で2022年2月に正式オープンを迎えました。
誰のための場所?
研究会では、具体的な設計や費用など事務的な議論も必要でしたが、初期のコンセプトを決める段階では「誰のための場所にするか?」の議論にも時間を費やしました。
「マインドマップ」というフレームワークを使いつつ、参加者の自由な意見をまとめていくと「子育て世代向け」というキーワードが浮かんできました。ですが、研究会の参加者は講師である私も含め、全員が「男性・おじさん」。このメンバーだけで子育て世代を語るには多様性に欠けるということで、レイクピアウスイに入る保育園の職員さんにアンケートを実施するなどして意見を募りました。
運営方法などの調整で、まだ子育て世代向けのイベントは実施されていませんが、今後、さまざまな地域の関係者を巻き込みながら、子育て世代にも使ってもらえるようなイベントを展開していく予定です。

「うすいコミュニティひろば」のオープンにあたっては、告知用のホームページを新設するとともに、佐倉市民をターゲットにしたインターネット広告(スマホやPCなどで閲覧できるネット上の広告)も同時に配信し、デジタルを活用した認知向上を展開しています。
ネット広告を配信すると、世代や年齢ごとにどんなユーザーが広告に興味を持ったかがデータとして分かります。配信結果をみると、「女性・30代以上」の反応が良いことが分かり、当初コンセプトの「子育て世代向け」が実際のニーズと一定程度合致していたことが裏付けられました。
「子育て世代向け」のコンセプトは、最初は研究会メンバーの仮説に過ぎませんでしたが、ネット広告を配信してデジタルデータが得られたことで、仮説から「確かな進むべき方向性」へと進化しました。こうしたデジタルデータの使い方は「デジタルを手段として活用すること」の好事例といえます。
まとめ:デジタル化は「手段」
臼井地区商店会連合会がこれまで取り組んできたWi-Fi環境の整備やインバウンド向けサイトの開設は、ともすると研究会メンバーが「こうしたい」と思ったことを実現する取り組みでした。言い換えれば「デジタル化を進めること」が「目的」になっていたのです。
ですが、「うすいコミュニティひろば」の開設に伴うコンセプト決めやネット広告配信のフィードバックを通して、追い求めなければならないのは「誰に」「どうやって」「どんな風に」使ってもらうか、という利用者目線の運営だということが見えてきました。デジタルは「手段」という認識が少しずつ広がり、デジタルを活用した先にどんな利用者の体験が提供できるかを考えていく土壌ができてきたといえます。

このように臼井地区商店会連合会は、2021年度の研究会を通して「デジタル化の罠」から一歩抜けだし、デジタルをうまく活用しながら利用者の体験をどう提供していくか、という新たな次元での事業展開に取り組みつつあります。2022年度はショッピングモールの店内に開かれた「うすいコミュニティひろば」を会場に研究会を開催し、利用者目線での体験の実現を模索していきます。
本稿をお読みの組合の皆さんも、①デジタル化は「目的」ではなく「手段」である、②デジタル化の実現の先に利用者(顧客・消費者)の体験が向上することを目指すべきだ、という2点を押さえてデジタル施策に取り組まれることが望ましいと考えます。
(株式会社千葉日報デジタル 中島悠平)
コロナ禍で社会経済活動のあり方が大きく変わる中、地域事業者も自社の事業のあり方を見直していかなければならない時期に差し掛かっています。これまで「当たり前」とされていた方法が通用しづらくなる時代において、地域事業者はどんな方向に進んだらいいのか――。
そうした課題の解決に向けて、千葉県横芝光町で3月、経営層が集まって「次の一手」を考えるワークショップが開催されました。その模様をレポートします。

「同じことをやっていても事業拡大は難しい」
「今までと同じことをやっていても事業拡大は難しい。新しいことを始めなければ」
「受託業務ばかりで『待ち』の営業になっている。自社ブランド展開ができないか」
「地域の従業員に働き続けてもらうには、どんな職場環境が望ましいか」
3月にもかかわらず雪がちらちらと舞っていたこの日、横芝駅前情報交流館「ヨリドコロ」に地域の経営者や横芝光町商工会の職員ら8人が集まり、こうした経営をめぐる議論をざっくばらんに交わしていました。
この日開かれていたのは「会社経営の『次の一手』を一緒に考えませんか? ~プロモーション視点を取り入れた事業再構築を知るワークショップ~」。横芝光町商工会の関係団体・横芝光町雇用管理協議会と千葉日報デジタルの共同企画です。
コロナと経済の両立をどうするか?
はじめに、横芝光町商工会経営指導員(3月当時)の鈴木茂さんが、趣旨をこう切り出します。
「コロナと経済の両立が大事になってきました。『グレートリセット』という言葉も出てきたように、コロナ禍は社会の大きな転換期に差し掛かっています。そうした中、国も事業再構築補助金などの事業を新しく見直す取り組みを後押しする仕組みをつくっています。こうした視点で皆さんの事業について意見交換ができればと考えています」

事業再構築補助金、獲得の実際
続いて、横芝光町商工会のサポートで実際に事業再構築補助金を獲得した2社のインタビューです。ここからは千葉日報デジタルの中島が進行役を務めました。
まず、農業生産法人「理想郷」のケース。自社で取り扱っている米粉を使い、新たに米粉パンを製造・販売する事業再構築を計画していることが紹介されました。
次に、介護施設を運営する「グループホーム光」のケース。介護保険制度の範囲で事業を行うため事業拡大が難しい中、新たな視点で成長につなげようと「運動特化型デイサービス」などの新規事業を進めていくと説明がありました。
いずれも既存の自社事業のリソースを生かしつつ、将来に向けて新たな「次の一手」を打とうとする内容になっています。
消費者・利用者目線で必要な「プロモーション」
どちらも事業再構築補助金を獲得しているため、計画書では自社の強みと市場環境を掛け合わせた現状分析などができています。ただ、今後実際に事業化していく際には、消費者・利用者に向けたプロモーションや周知・集客活動が必ず必要になってきます。
進行役の千葉日報デジタルは、事業者のニーズに合った情報発信サポートを得意とするため、競合と差別化するためのブランド戦略や販売ターゲットの設定、商圏や客層に合った周知・集客方法といった具体的なアドバイスを織り交ぜてインタビューを進行していきました。

ワークショップならではのざっくばらんな情報交換
後半は、他の参加企業の課題も深掘りしていきます。例えば製造会社からは「今は受託業務が複数来ているが、自分たちでコントロールできないので『待ち』の営業になりやすい。自社ブランドの展開ができないか」といった話題がありました。
また、別の製造会社からは「比較的安定して地域の方に従業員として働いていただいているが、さらに働きやすい職場にするにはどんな改善をしたらいいか」という問いかけがありました。会場からは「うちの場合はこんな風にしている」などワークショップならではのざっくばらんな情報交換が生まれていました。
「次の一手」のヒントを得る場に
この記事だけでは一見ただの雑談だけで終わってしまったように見えますが、ワークショップ終了後には、個社同士が個別に相談している姿も見られ、この雑談をきっかけに新たな協業が生まれそうな雰囲気もありました。
参加者の一人からは「ただの『お勉強』のセミナーでもなく、ただの『飲み会』のような他愛ない会話でもなく、ちょうどその間でざっくばらんに話をしつつ、事業のヒントが得られた」とワークショップならではの気づきがあったことが語られました。
今回のワークショップを通して、参加各社の課題感とそれに対するリアクションが「気づき」を促し、各社が次に打つべき「次の一手」のヒントが得られたことは間違いないようです。
◇ ◇ ◇
千葉日報デジタルは、地域の経済団体との連携で地域事業者の情報発信サポートを展開しています。今回のようにワークショップ形式での開催も可能です。
ご興味がおありの方はお気軽に「お問い合わせ」からご連絡いただければ幸いです。
今回は、千葉県の観光活性化に向け、旅館ホテル組合と地域メディアの千葉日報グループがタッグを組んで、デジタルを活用した情報発信に取り組んでいる事例のご紹介です。

インタビューを受けていただいたのは、千葉県旅館ホテル組合の武川豊事務局長。千葉日報グループとの連携のきっかけから、「成功」を実感したデジタルプロモーションの展開事例、コロナ禍を経た千葉県観光の将来まで、幅広く語っていただきました。

――まず、千葉県旅館ホテル組合について教えてください。
【武川さん】 正式名称は「千葉県旅館ホテル生活衛生同業組合」といい、昭和33(1958)年に結成されました。もともとは旅館・ホテルの衛生管理の強化を推進する組織でしたが、今は宿泊業界全体の発展に向けてさまざまな取り組みを進めています。千葉県内に25支部があり、組合員は331施設です。
――地域メディアの千葉日報グループ(千葉日報社・千葉日報デジタル)と、2020年11月に包括提携協定を結びました。どんな経緯があったのですか?
【武川さん】 「組合の情報発信にデジタルを活用したい」という課題がありました。今の観光誘客を考えた時にデジタル配信は欠かせないですが、組合としても、個々の組合員としても、そこが弱点だったので、時代のスピードに合うようにてこ入れしたいと考えていました。
2020年の秋頃、コロナ禍の感染対策を紹介する組合制作の動画を、千葉日報さんの動画サイトに掲載してもらったことで関係性ができました。

――提携を結ぶ決め手は何でしたか?
【武川さん】 その後、千葉日報さんから協定の打診を受け、『千葉日報』は千葉の地元紙、私たちも地元の組合なので、千葉県の情報発信をする、経済活性化を図るという方向性は一緒、ぜひ協力して、相互にうまく進んでいければと思い、提携を結びました。
――これまでどんな取り組みをされてきましたか?
【武川さん】 2021年1~3月には、青年部の有志と「コロナ後の千葉の観光を考える」と題して座談会を不定期で開催しました。コロナ禍の今は苦しいですが、コロナが明けたら必ず観光需要は戻ってきます。そのときに慌てて何かやろうとしても遅いので、先回りして観光活性化のアイデアをざっくばらんに話し合いました。

また、4~5月には組合独自の宿泊キャンペーンを実施し、そのデジタルプロモーションを千葉日報さんにお願いしました。これまでも組合ではキャンペーンをいろいろとやってきましたが、デジタルプロモーションを絡めたのは初めてでした。
――デジタルプロモーションを取り入れた手応えはどうでしたか?
【武川さん】 「成功」だと思います。今回は宿泊キャンペーンの特設サイトを用意して、そこにお客さんを誘導するためのネット広告を期間限定で展開しました。その結果、お客さんにキャンペーンを認知してもらえたし、その後のお客さんのリピートにもつながったので効果が大きかったと思います。
これまで紙媒体だけでプロモーションをしていたときは結果が見えにくい部分もありましたが、デジタルを活用したプロモーションを組み合わせることで、スマホを使ったりしているお客さんにも効果的に情報発信し、認知に結びつけることができました。
今後、同じようなキャンペーンをやるときは、今回のようなデジタルを活用した流れで情報を打ち出し、誘客につなげていきたいと思います。

――今後、組合としてどんなことに取り組んでいきますか?
【武川さん】 今後、観光がどうなるかは未知数ですが、インバウンドはすぐには戻ってこないし、逆に海外に出て行く勢いもすぐには戻らないと思います。ですので、しばらくは国内旅行、特にマイクロツーリズムの需要があり、そこに力を入れていかないといけない。
幸い、千葉県は東京近郊で、莫大な人口を抱えるエリアにあるのでマイクロツーリズムには有利。このアドバンテージをしっかり受け入れられる体制を強化する必要があると思います。
おいしい料理や快適に過ごせることだけでなく、組合で取り組んでいる感染対策や障害者の皆さんのおもてなしなどの魅力も加えていく必要があります。
さらに、そうした取り組みを発信していくことも必要です。組合は情報発信に関しては専門家ではないので、組合で取り組んでいることをどう知らしめるかを、千葉日報さんと組んで一緒にやっていきたいと思います。それによって、千葉県内の観光が活性化して、千葉県が活性化するという全体のメリットにつながればいいと思います。
――ありがとうございました。