東京都に本社を置くシステム開発企業、大崎コンピュータエンヂニアリング(OCE)。千葉県内を中心に行政や企業向けの業務システムや情報通信インフラの構築を多数手掛け、現在は顧客向けのデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に力を入れています。

近年は「お客様のDX推進には、まず自分たちから」との考えのもと、3つの重要戦略を立て社内のDX化にも力を入れ推進しています。社内DXの推進を統括する事業推進統括部NB推進室長の森雄介さんに、具体的な取り組みから社内に起こった変化、見えてきた課題を伺いました。

■社内DX推進へ、意欲的な取り組みが継続中

––––自社内のDXでは具体的にどのような取り組みをされていますか?

事業推進統括部NB推進室室長・森雄介さん(以下、敬称略)

当社は「信頼とサービスを基本にお客様の確かなDXを実現する」を経営ビジョンに掲げ、その実現のため「リアルタイム経営の実現」「非知的労働時間の削減」「DX実現に向けた人材育成、確実な品質向上」の3つを重要戦略としています。

「リアルタイム経営の実現」では、以前から使っていたグループウェアを今年刷新します。ポータルサイトを再構築したり、チャット機能を入れたりすることでワークフローを新しくして、これまでのスケジュール管理や会議室共有をする機能から、社内情報の流通を良くするような、情報連携基盤的な位置付けに再構築をしています。

2番目の「非知的労働時間の削減」では、RPARobotic Process Automation)の導入を推進し、社内活用しています。例えば、営業の原価管理は仕入元帳と原価計算書のチェック業務を、これまでは事務担当が行っていましたが、RPAの導入でソフトウェアロボットによって自動化しています。

3番目の「人材育成、品質向上」では、OCEアカデミーという教育訓練専門の部署を立ち上げました。これまでは営業・SE・工事と部門ごとに人材教育が完結していましたが、OCEアカデミーの設立により、職種の垣根を超えて共通して習得してもらいたいスキルを学べるようになりました。共通スキルの42講座は動画として作成し、教育サイト上で閲覧できるようになっていて、全社員に必ず受講してもらう形をとっています。

––––社内DXの推進によりどのような効果が出ていますか?

「非知的労働時間の削減」であれば、原価管理などの営業事務、仕入れ登録などの購買事務にRPAを使い始めたことで生産性の向上につながっています。

DX実現に向けた人材育成、確実な品質向上」では、OCEアカデミーの設立により、DX推進に必要な人材育成や、個人のキャリアに応じた学び直しの機会の増加につながっていると思います。各部門のプロジェクトマネージャーやDXを牽引できる係長クラスの人材を「現在の2倍」にする目標を立てて、新しい講座を随時検討するなど継続的な取り組みを実践中です。

■ポイントは「情報の伝え方」。DX成功事例の積極的な発信へ

––––社内DXの実践による将来的な目標はありますか?

お客様にどうやって効果的に製品、サービスの情報を届けられるかがポイントだと考えています。まだ数は少ないですが、お客様がDXを進めたことによる改善事例や社内DXで効果的だった事例を、ホームページなどを通じてお客様にお伝えしていきたいと考えています。

こうした事例紹介などを通して、今後はより多くお客様のためになる話題をお届けすることが目標の一つです。それをご覧になったお客様から、新たな業務のつながりができれば嬉しいですね。

––––お客様に情報を伝えていくためにどのようなことに取り組んでいますか?

私の部門では当社のホームページをよりお客様にアピールする業務も行っています。先ほどのお客様や自社DXの事例紹介など、情報発信については2022年から千葉日報デジタルさんと連携して進めています。

例えば、ホームページの閲覧数を増やす目的でGoogle広告を打っていますが、私たちにはその達成数値が妥当なのかが今ひとつわかりません。そこで、毎月の閲覧数や改善策などにご意見をいただいています。また、ホームページ内の誘導動線やホームページで何を発信していくかなど、方針や目的まで含めた総合的なアドバイスを受けながら改善を進めています。

––––今後、情報発信でどのようなことに取り組んでいきますか?

ホームページのリニューアルを考えていますが、単に全体を作り変えるのではなく、お客様と直接つながるような仕組みを持った形にできればと考えています。

例えば、現在、お客様からいただいたアンケートなどのフィードバックはまだ集約しきれていない気がしています。フィードバックの方法も営業社員が現地に行ってヒアリングするスタイルが常です。

こうした部分についてもホームページをうまく活用できないかと考えています。ホームページが、お客様との接点を増やし、量・質ともに良質なコミュニケーションの窓口となるようなイメージです。こうしたリニューアル部分でも千葉日報デジタルさんにアドバイスをいただきたいと考えています。

大崎コンピュータエンヂニアリング(OCE)は、東京都に本社を置くシステム開発企業です。千葉県内54自治体に導入済みの総合行政ネットワーク「LGWAN」からのシステム提供をはじめ、千葉県を中心に、行政や企業向けの業務システムや情報通信インフラの構築を多数手掛けてきました。

近年では、コロナ禍で生じたテレワーク需要や国が進めるデジタル化の施策を受け、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に力を入れています。

千葉県の自治体がDXを推進するために、OCEがどのような形でサポートを行っているか――。現場を指揮する公共DX推進部長の薄井直毅さんに、自治体DXの最前線を伺いました。



■市民サービスの向上を目指し、総合的なDX化を提案

––––千葉県の自治体向けにどのようなDXサービスを提供されていますか?

公共DX推進部長・薄井直毅さん(以下、敬称略)

国がDXの全体計画を作って各自治体に推進を奨励している現状を踏まえ、当社ではその方針に沿って業務を進めています。

具体的には、市民が自治体に何か申請する際に、これまでは直接窓口に出向いて、そこで用紙等に記入することが一般的でしたが、今は皆さんがスマートフォンをお持ちでインターネット環境があるため、そこから申請できるような仕組みづくりを行っています。

さらに、自治体業務を電子化するには、データを安定的に流通させるシステムも必要なため、アクセスに関わるネットワーク機器やインフラ部分の導入にも積極的に関わらせていただいています。

––––自治体向けのDXで特に意識している部分はどのような部分ですか?

薄井

お客様である自治体からは、「窓口機能を順次デジタル化してほしい」「システムを入れた後の運用面も含めて周辺環境をデジタル化してほしい」といったご要望が多いです。

こうしたご要望にお応えするため、「当社のサービス提供を通じて市民サービスの向上を果たす」ことを念頭に、各種サービスの提供を行っています。

市民の方々がストレスなく行政サービスを利用するには、バックオフィスなど裏方業務の改善も必要です。そうした裏方業務のDXも一手に引き受け、総合的なデジタル化を目指しています。

システムの入り口部分を電子化しても、その後の工程で、結局紙で印刷する状況が生まれては元も子もありません。そうならないように、お客様個別の優先課題を把握しながら、トータル的なご提案を差し上げています。

––––自治体DXの分野でOCEの強みはどこにあると考えますか?

薄井

お客様が要望されるDXの切り口はさまざまで、全システムに関わるエンジニアから、ネットワーク部分の技術者、配線周りから構築する施工部門まで、全員の力が必要なことが多いです。こうした通信だけでなく、施工部分までサポートできるのは私たちの一番の強みだと思っています。

加えて当社にはデータセンターもありますので、大企業にはないスピード感を持って、情報・通信環境の整備から保守・運用面まで、総合的に課題に向き合うことが可能です。



■現場の課題を解決し、DXの真の価値を示したい

 ––––お客様からの反響で印象に残った声はありますか?

薄井

コロナ禍において、市民の方々が在宅勤務の自治体職員とコミュニケーションを取るには電話かメールだけにツールが限られていました。それが、最近では自治体向けのチャットツールの導入で、今まで以上に円滑なコミュニケーションが取れるようになった例があります。

また、会議を例にとっても新規のコミュニケーションツールの導入で、打ち合わせの質が上がったり、一箇所に集まらなくても十分に情報共有ができたりと、自由度が高まったことで、とてもお喜びいただいた経験があります。

お客様からこうしたお声を頂戴すると、DX化の真の価値は現場の課題解決にあると強く感じます。

当社では、自治体向けに「自治体ジャーナル」という情報誌を発行しています。そこでは先ほどのチャットツールの話など、お客様にヒアリングした導入効果の話題を事例として掲載しており、自治体の課題解決のお役に立てるよう情報共有しています。

––––顧客とのつながりを強化するために、どのようなことに取り組んでいますか?

薄井

当社は本社が東京ですが、お客様である自治体とのつながりは千葉県内が多くあります。また、コンピューターや通信関連のシステムを構築してサポートするのは得意分野ですが、「情報発信」に関しては自治体向けの情報誌を内製してはいるものの、ほぼ手探り状態です。

そこで2022年から千葉日報デジタルさんとタッグを組んで、情報発信の方法やホームページの活用法など、さまざまにご指導いただきながら取り組みを進めています。

当社のお客様の成功事例や有益な情報を上手に届けられるようにするには、まだ多くの学びが必要だと考えています。そこはメディアの知見があり、地元密着かつデジタル領域に詳しい千葉日報デジタルさんの強みを生かしていきたいと思います。

––––自治体のDX推進について、OCEとして将来の展望を教えてください。

薄井

自治体DXの実現は、自分たちだけではできません。現在、ITやシステム関連業界では、さまざまな新しい技術やソフトウェアが日々開発されていますので、それを自分たちの会社にも取り込んで、新しい事例に向き合いたいと考えています。

これまで自治体の中だけでの課題解決はなかなか難しい面がありましたが、民間の技術や知見をうまく組み合わせることで、自治体や市民の皆さんの生活が、より豊かになるDX実現のお手伝いをしていきたいです。


創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」は、2022年10月の集大成となるビジネスオーディションをもって成功裏に終了しました。この活気ある創業者支援イベントを市原商工会議所と共に、裏側からリードしたのが千葉日報デジタルです。

今回は、ビジネスオーディションに至る3段階の支援ステップの内容から、事業実施の狙い、イベントを成功に導く仕掛けなどを千葉日報デジタルの事業キュレーター・中島悠平がインタビュー形式で解説します。

 

事業の「芯」を魅力的に見せる、伴走型のサポート


––––本番までには、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンの3段階のステップがありましたが、その具体的な内容を教えていただけますか?

ワークショップは2回行う予定で、全ての参加者に出席していただきました。初回は自己紹介を兼ねて、各々の事業を10分程度で語っていただき、互いの理解を深めました。

ほぼ雑談のような感じで終わりましたが、裏側の意図には、この場からある種の創業者コミュニティのようなものが生まれて育ち、街全体の活性化につながればという思いがありました。それもあって、可能な限りコミュニケーションを取る場を作りました。

そこから2週間ほど後に実施した2回目では、このステップの趣旨であるデジタルマーケティングを深掘りして、お客さんの集め方や事業の周知方法についてディスカッションをしました。



例えば、「○○○○で税務調査とさようなら」をテーマにプレゼンした税理士の西村さんは、ホームページを持っていましたが、税理士会のひな型を借りて作っており、もう少し自分のオリジナリティを出したいというご希望がありました。

「おもてなしアートで集客・接客向上」の坂本さんはインスタグラムを使っていましたが、「自分の顔を出すのは恥ずかしい」と話していました。一般的なアーティスト兼代表という方は、自らがインフルエンサーになって、顔も作品もアピールすることがよくあります、というアドバイスもしました。

一方、「市原の太巻き寿司を世界へ」をテーマにプレゼンした上田さんは、10年以上太巻き寿司の料理教室を運営していた結果、教室のホームページのSEO上の価値が上がっていたことが、お話ししてわかりました。

––––そこから個別相談に移って、さらに事業を磨くわけですね。

はい、ワークショップは本当に“さわり”なので、全4回の個別相談を通して各参加者の事業を深掘りし、より魅力的に見せる工夫を施していきました。

個別相談の初回は、まず「アイデアの先鋭化」から始めます。皆さんそれぞれ今の事業に思いはありますが、今回は最終的に8分間のプレゼンに収めなければいけないため、事業をいかに魅力的で、かつ分かりやすくまとめられるか、に頭をひねりました。

例えば、「日本初、高性能ベビー向け製品を発表!」の石井さんにはBtoBの路線からBtoCへの転換をご提案したり、チョークアートの坂本さんにはサブスク型モデルのアイデアをお出ししたりしました。個別相談は1回1時間しかないため、初回は千葉日報デジタルの経験とノウハウをフル活用し、先鋭化できそうなアイデアをまとめあげました。



2回目以降は、初回でまとめたアイデアをもとに、事業を具体化しつつ、プレゼンを見越して「どう見せるか」も検討していきました。皆さんスライドを使ってプレゼンするため、個別相談の中で写真の取捨選択や原稿のストーリーなどのブラッシュアップも行いました。

そして、最後のステップがプレゼン対応レッスンです。当初よりビジネスオーディションでは、会場に50名ほどの来賓を呼ぼうと市原商工会議所側と合意していました。それも一般のお客さんではなく、金融機関関係者、地元でご商売されている方、創業者の先輩など、BtoBになる方たちです。そこで「見せる」という意味では、こういった方々に刺さって、自分たちの商売を次につなげていけるような内容にすることを一番に心がけました。

例えば「木こり花澤 山を守る地域密着型SDGsビジネス」の花澤さんは、当日の仕掛けとして、普段の作業服姿でチェーンソーを持って登場する演出を施しました。まず見た目のインパクトで「木こり」というプレゼン内容に興味を持ってもらう狙いです。

また、「人事の力で業績アップ」の村山さんは、自身がエネルギッシュで内容が盛りだくさん過ぎたため、もう少し要約して核を決めましょうとアドバイスさせていただきました。



事業の芯を深掘りすることは大事ですが、それをどう伝えるか、どう見せて心を掴むかまで含めて、私たちで色々とアドバイスさせていただいたのが、個別相談とプレゼンレッスンです。

今回のビジネスオーディションは、経営計画や売り上げ目標を計画書的に具体化することよりも、プレゼンとして面白いかどうかが重視されたイベントです。事業の深掘りやプレゼンのレッスンは、当然そのゴールを意識してつくり込むことになります。

広報的な視点から、イベントに「一体感」を仕掛ける

––––オーディションの参加者は、マーケティングの総合的な視点が養われそうですね。

今回のイベントの裏のテーマは、広報宣伝の考え方や骨格を知って、体得していただくことにあります。3つのステップも、今回に限ればビジネスオーディションという場に向けて、自分達の事業をブラッシュアップする作業ですが、実は、やっていることは広報宣伝を組み立てるプロセスと全く同じ構造です。

イベントのゴールに向けた作業を違う形で横展開すれば、すぐにプロモーションスキルとして活かせる仕掛けが、各ステップには施されています。参加した方々は、この先、新規開拓しようとすれば、いつか「自分の強み、使用する媒体、伝え方」といったマーケティングの課題に直面するはずです。その時に今回の経験が必ず活きてくると考えています。

––––うちわを使った採点方法が面白かったです。

今回のビジネスオーディションは、うちわの裏表で「興味があります」と「もっと聴かせて」という2パターンを出せるようにしており、いわゆる“審査会”ではありません。これは商工会議所側との序盤の打ち合わせで、「参加しやすいフランクな雰囲気」を作るにはどうしたらいいかと考えた結果です。

こうしたオーディションには大体、審査員がいて、お客さんは蚊帳の外になりがちですが、今回はそうではなく、皆で彼らを応援する空気感を醸成したい思いがありました。

加えて、私たちの最大の強みである、「広報の視点から事業やイベントを組み立てる」視点も反映されています。イベントであればメディアに掲載された際に写真映えして、いかに「面白そうなイベントだな」と思ってもらえるかが肝です。そこから逆算して、会場に一体感を生んで、華やかさも演出できるツールとして、うちわの採用となりました。

 

地域の商工会議所との連携で、周囲を巻き込むイベントを育てる



––––初のイベントで、商工会議所との連携面はいかがでしたか?

当日はかなり大規模にやらせていただき、市原商工会議所の皆さんの準備には頭が下がる思いです。これ以外にも、参加者のパワーポイントの細かい設定や原稿修正の実務作業など、基礎的なバックアップを確実にしていただきました。

そのおかげで私たちは、参加者とのディスカッションやアドバイスに集中できました。市原商工会議所の皆さんは事務的部分、私たちは事業の深掘りと、うまく役割分担できたことで、お互いの強みが発揮できたと感じています。

––––周囲からの反響はいかがでしょうか?

来賓の皆さんからは、とてもいい発表だったとお褒めの言葉をいただきました。千葉日報デジタルとしてもこうした試みは今回が初ですが、期待以上の手応えです。

加えて、会場に設けた発表者用のブースも大好評でした。ブースにはプレゼン終了後から結果発表までの合間の30分程度に巡ってもらう想定でしたが、太巻き寿司を試食したり、チョークアートの作品に触れたりと、みなさんが積極的に立ち寄ってくださいました。



参加者のみなさんには、あらかじめブースにお客さんが来た際に、何かお渡しできる資料を必ず用意してくださいとアドバイスをしていました。単なる事業のお披露目の場ではなく、そこでお客さんを獲得するくらいのつもりで臨むための仕掛けです。

結果的には、当初もくろんでいたコミュニティのようなものが生まれて、地域の事業者の方が発表者である創業者を遠くから見守るのではなく、近しい関係を持てる場が作れました。

––––最後に、イベントを終えた率直な感想と今後の目標を教えてください。

私たちの仕事は本番前の最終リハーサルまでで、本番になってしまえば、あとは発表者が頑張るしかありません。ですが、当日の会場に行って皆さんのプレゼンを見終えると、ほっとした気持ちと、しっかりと発表できた喜びで、泣きそうになるぐらいに感動的でした。

これはやはり、この3ヶ月間の密度の濃さの表れですし、何より登壇した6名の方が、本気で頑張ろうとやってくださったことへの感謝の思いでもあります。

私たちの強みは、プロモーションや広報において「どういう風に見せるか」という視点から、逆算して事業や商品・サービスを組み立てることです。今回のイベントもこの視点を持って臨んだことで、成功に導くことができました。

ビジネスオーディションの終了後、発表に参加した創業者の何名かはアフターフォローのサポートも始まっています。プレゼンで発表した内容をより具体化し、実際の収益につなげていく意欲があり、これからさらにサポートを強化していきたいと考えています。

今後も、今回の市原商工会議所さんとのご縁を大切に、引き続き市原市での支援事業に関わらせていただき、創業者や既存事業者の発展に貢献していきたいと思っています。

 

市原商工会議所が千葉日報デジタルと協業して進めてきた、創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」。その総決算のビジネスオーディションは、盛況のうちに幕を閉じました。

成功の裏には、マーケティング視点を取り入れた双方向のコミュニケーションや、事業の「核」の可視化を心掛けた取り組みがあったようです。

今回は当オーディションを陰ながらサポートした市原商工会議所の3名の方にお集まりいただき、プロジェクト発足の経緯から、千葉日報デジタルとの協業のメリットまで、お伺いしました。

 

“継続性”を大切に、新・創業支援事業を開始



––––ビジネスオーディションを開始した経緯をお聞かせいただけますか?

市原商工会議所 産業振興部 部長・藤田 智成さん (以下、敬称略)
市原商工会議所は日頃創業支援に力を入れており、過去56年間は、起業家を募ったフェスタや創業スクールなどのセミナー形式の催しを行っていました。

しかし、近年はコロナ禍もあって、地域の経済が停滞して廃業が増えてしまっています。やはり、地域経済の活性化には、創業による新陳代謝をしていかなければならないため、3年前には「創業からの成功ストーリー発表会」を開催しました。

これは創業10年目くらいまでの、業績が伸びている経営者の方に体験談を発表してもらう試みで、発表者のビジネスと私たち商工会議所の取り組みを知っていただく狙いがありました。

結果的にはこれが成功を収めて、こうした発表の場を年間通してできないかと、千葉日報デジタルさんにご相談したことが始まりです。

––––今事業では、単発で終わらない継続性も大切にされたそうですが?

藤田
当初は資金調達のチャンスを提供したいと考えてピッチイベントの開催を予定していましたが、ビジネスパートナーを集めるだけでは単発で終わってしまう懸念があったため、議論を重ねた結果、しっかり前準備を整えられるオーディション企画の流れを考えました。

商工会議所の業務と言うのは会員の経営者を事務的にサポートすることが多いです。手続きが終われば段々と関係が薄れてしまう、この習慣を変えていかなければならないぞと。そこで、段階を踏んで参加者を成長させて、仲間意識を醸成する、「交流会+発表イベント」のイメージで構築しました。

 

デジタルを駆使した販路拡大&人材育成スキル、千葉日報デジタルと組んだわけ


––––ビジネスオーディションを進めるにあたり、千葉日報デジタルと連携された狙いはどこにあるのでしょうか?

藤田
私たちは事務的な対応を得意にしている反面、販路拡大スキルは不得手です。そこで外部の手を借りようとなった際に、広告宣伝のメディアと組みたいと思いました。

ちょうど時を同じくして、千葉日報さんが新会社である「千葉日報デジタル」を立ち上げるとお聞きして、これはぜひお願いしたいと思いました。

実は他にも数社の候補がありましたが、やはり人材やビジネスを育てていこうという「公共性」、さらに今後DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されるビジネス環境の中で「デジタルマーケティング」の部分で非常に知見をお持ちですので、最終的に千葉日報デジタルさんにお願いすることにしました。

––––具体的に印象に残っているサポートはありますか?

藤田
千葉日報デジタルさんからは、最初の頃の打ち合わせで、「単発のセミナーを辞めましょう」、「もう少し相手の事業を深掘りできる事業をしませんか」とご提案いただいてこの話が始まりました。ここは自分たちでも課題に感じていました。

今回はビジネスオーディションというゴールがあって、それに向けて何が必要かを探る過程で、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンという三段階の流れが確立されました。

これも千葉日報デジタルさんのご提案です。こうしたイベントを実施するにあたって、長期計画を練る経験が私たちには足らなかったため、ゴールから逆算した様々な段階を設定いただけたことはありがたかったです。

 

事業拡大に向けた、市原商工会議所のバックアップ体制が進化



––––千葉日報デジタルとの協業で、実感したメリットを教えてください。

市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・田村 光由さん (以下、敬称略)
これまでは市原商工会議所に相談に来られる方への対応は、その場限りで途切れてしまうことが多かったです。それが、今回のオーディションでは一つのことが終わったら次のことへと続けていく支援のやり方や、私たちでは思いつかなかったアイデアの提示の仕方などを、千葉日報デジタルさんから学べたことは良い機会でした。

組織的な部分では、継続した支援のスケジューリング、次はこれをやってきてくださいという課題の出し方、設定の仕方はとても勉強させていただきました。これは例えば、相談者の方が補助金の相談でいらした場合でも、逆算したスケジューリングは活きるのではと思います。

市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・松尾 隆大さん (以下、敬称略)
相談者の方と個別でお話しすることは多かったですが、経営やこんなビジネスをやりたいというご希望を、色々な事業者が集まる中で話し合う場はこれまでありませんでした。

特に今回の参加者は業種的にバラバラで、そんな皆さんが何度もディスカッションをする過程で、自分の強みや、それは活かせるのでは?といった意見が飛び交って、その熱量がコミュニティーの形成に繋がったのかなと思います。

加えて、個別相談での千葉日報デジタルさんのアイデアの引き出しの多さにも驚かされました。各々が業種もやりたいことも違う中で、しかも限られた時間内に様々なご提案をしていただき、そういう部分は、商工会議所にはないところだなと実感し、今後取り組んでいかなければならないと感じました。


藤田
市原商工会議所では、年に1度創業スクールというセミナーを実施してきました。しかし、創業計画でフォローできるのは資金調達までで、その後の課題は結局販路拡大です。創業者の方がマーケットという大海原に放り出される中で、私たちには支援する方法が足りていませんでした。

そこを、創業スクールからビジネスオーディションの流れを作ることで、市原商工会議所がバックアップできる体制ができたと思っています。

そのため、私たち職員もこれまでになく、各員が奮闘したと感じます。従来は、職員が決められた業務を各々で行っていましたが、そうではなく“皆でゴールに向かっていく”経験をさせていただけたことは、かけがえのないものだと思います。

 

ビジネスオーディションを皮切りに、市原市に産業の支援拠点を創出


––––ビジネスオーディションは今後も継続予定ですか?

藤田
このスタイルでやりたいです。当初はピッチイベントと呼称していましたが、市原市では時期尚早という気がして、名前を「ビジネスオーディション」に変えた経緯があります。参加者も投資家を募るのではなく、これは交流会の発展系のような“仲間を増やす”イベントです。

この空気感は審査の手法にも表れていて、良し悪しを判断する「審査員」を置くのではなく、会場の皆さんが聞いた後に「興味がある」「もっと聴きたい」と書かれた団扇(うちわ)を上げてもらう評価方法にしました。昔のアイドルオーディションのようなイメージで、これも皆で話し合っている中で生まれたアイデアです。

あまり投資的な側面は出さずに、市原市の地域性を大事にしていけば、次回も多くの方にご参加いただけると考えています。



––––市原商工会議所として、今後力を入れていきたことを教えてください。

田村
千葉日報デジタルさんと組ませていただいたことで、これまでは創業スクールで終わっていた支援方法に次の段階が見えました。そこで、さらに次のステップを考えても良いのではと思います。今回は販路拡大といっても、あくまで市内の事業者の方がメインでしたが、市外、そして県外へと広げていくステップを、私たちが用意できたら意義のあるものになると考えています。

藤田
当所は、市原市とともに、202210月に、サンプラザ市原に産業支援センターのサテライトをオープンさせました。その結果、創業者の方の相談が以前より増加しており、頻繁に行われる小セミナーへの参加者も増えています。この形をこれから継続、拡大させていきたいです。

もちろん、ビジネスオーディションにも引き続き注力して、参加事業者さんには販路拡大、雇用創出とステップを踏んでもらいたいです。そしてその先に、私たちが取り組む表彰制度「市原で大切にしたい会社」にエントリーできるような企業に育って欲しい、これが私の考える未来像です。

松尾
これまで市原商工会議所では単発のセミナーが多かったので、今後もビジネスオーディションのような少人数のコミュニティーが生まれる事業を推進したいです。そうした小コミュニティーをいくつも作って、その方々が産業支援センターを拠点に集まって、ビジネスの話をする流れになれば、この場所も活性化します。

また、産業支援センターをコワーキングスペースとして、今以上に広く利用してもらうことや、少し角度を変えてSDGsの括りで事業者を集めたり、工夫の方法はまだまだあります。あの手この手で幅広い人材を集めて、グループ間の繋がりを促進して、いろいろな事業者さんが日常的に集まってくれる場になればと思います。

––––ありがとうございました。


千葉日報デジタルと市原商工会議所のコラボレーションで進められてきた、創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」。その総決算のイベントが、202210月に開催されたビジネスオーディションです。

多種多様な事業を志す6事業者が、3ヶ月あまりをかけて自らの事業をブラッシュアップし、プレゼンテーションを行いました。

今回は、当オーディションに参加した4名の方にお集まりいただき、プロジェクトへの参加で感じたメリットや、今後の展望を掴むきっかけとなったサポート体制など、ざっくばらんに語っていただきました。

【ビジネスオーディション参加者4名】
Guuu animal chalk art代表・坂本沙矢加さん 《「おもてなしアート」で集客・接客向上》
ライフデザイン事務所代表・村山寛樹さん 《人事の力で業績アップ!》
花澤基工代表・花澤俊之さん 《木こり花澤 山を守る地域密着型SDGsビジネス》
ユニペン代表取締役・石井亮介さん 《日本初、高性能ベビー向け製品を発表!》

 

様々な事業の種と思いを胸に、市原市「市原未来創業プロジェクト」がスタート



––––新規創業者や事業転換者を対象に、20227月から始まった本プロジェクトですが、参加したきっかけを教えてください。

ユニペン代表取締役・石井亮介さん
市原商工会議所さんから連絡をもらった時には、SDGsに関係した企画だと勘違いしていました。行ってみると他の参加者は創業したての方がほとんどで、場違いかなとも思いましたが、皆さんと知り合いになりましたし、その環境で数ヶ月一緒にやってみようと取り組みました。

Guuu animal chalk art代表・坂本沙矢加さん
私は2022年の5月に創業したての時期で、今後市原でどういう活動をすれば良いかを市原商工会議所さんに相談している最中に、「オーディションには色々な方が集まるので勉強になるのでは」とお誘いいただきました。

花澤基工代表・花澤俊之さん
開業のきっかけは、2019年の市原商工会議所さんの創業スクールへの参加です。事業の準備をしていたところコロナ禍に遭って、2020年は営業活動がスムーズにできませんでした。そんな時に、デジタルマーケティングを含んだビジネスオーディションという企画を知って、心機一転して動き始めるには良いポイントになるのでは、と思って参加しました。

ライフデザイン事務所代表・村山寛樹さん
私は2022年にサンプラザ市原で行われた市原商工会議所さんのSDGsのイベントに出席していました。そこで、今後はビジネスピッチも実施すると伺って、これはチャンスだと思い自ら参加をお願いしました。
(※以下、敬称略)

 

活発なディスカッションで得る、自らの強みと弱み

––––本プロジェクトは、伴走型の事業のブラッシュアップが特長でした。ディスカッションも盛んに行われたようですが、参加したことによる気づきやプラス面はありましたか?

花澤
自分の得意な設計技術は、精密板金といった細かい図面を描くことで、そこを打ち出す考えでした。一方で、家業は代々受け継いできた“木を切る技術”です。

これは地元でも需要があって、特殊な技術を持った木こりだという話をしたら、千葉日報デジタルさんからは「木こりで行きましょう!」と後押しがありました。色々な工事の請負をする中で、自分の伐採や木こりの技術をもっと押し出した方がウケが良いのではと、見出していただきました。



坂本
この企画を通して、普通に営業活動をしても絶対に会えない、話す機会がないだろうという業種の方々と知り合えたことが財産です。また、様々なプログラムを一緒に受講する中で、他の業種から見るとこういう部分がビジネス的に活かせるよ、など多くのアドバイスを頂けたことが本当にプラスでした。

石井
当社は塗装、塗料で45年以上やってきた企業で、私は先代を継いで10年近くになります。この企画のために、新しい技術で作った遮熱シートを持ってきました。業界的には今までにない動きで面白いだろうと思いましたが、メディア的には特に目新しさがないと指摘されました。個人的には受ける感触があったので、このギャップはショックでした。

村山
プラス面の一つは、自分の仕事を認知していただけたことです。実際に市原市役所の職員の方に、オーディションの一週間ほど前にSNSでメッセージをいただいたり、元から繋がっている方も「村山って意外に喋れるんだ」と分かってもらえたりといったプレゼン効果があったと思います。

 

千葉日報デジタルによる親身なサポートで、事業内容が先鋭化

 ––––ビジネスオーディション本番に向けては、デジタルマーケティングワークショップ、個別相談、プレゼン対応レッスンと3つの準備段階が設けられていましたが、その期間のサポートで役に立ったことはありますか?

石井
最初のワークショップでは皆で集まって、自己紹介に互いの事業や経歴を発表する場がありました。そこで出てきた話の中から事業の種を深掘りして、その後個別相談に進みます。自分で考えていたアイデアは、遮熱シートを工場の屋根に取り付けるBtoBビジネスでした。

しかし、ワークショップや個別相談の中で、インパクトを踏まえると「BtoCへの転換」だろうと。私たちは95%がBtoBでやってきた会社だったので、これをBtoCに活かすにはどうすべきかを打ち合わせの中で話し合って、ベビーカーへの転用にたどり着きました。自分の考えが変わっていく過程が面白かったです。



坂本
私のチョークアートは手書きで、制作にも時間がかかるため、そもそもビジネスやお金にしづらい職業形態です。2回のワークショップを経た後も、ビジネスへのうまい転換方法が自分の中で見えませんでした。

流れが変わったのは、千葉日報デジタルの方々と個別相談をした後です。雑談のように私の過去の話から今の気持ちまでをフランクに話し、出てきたワードをアイデアとして引き出してもらう中で、徐々にビジネスにできるかもしれない感触が得られました。

特に飲食店や企業受付に設置する「おもてなしアート」を、月額利用で貼り替え対応できる、サブスクリプション型のモデルにしようというご提案は衝撃でした。このアイデアが出た時の「これしかない!」という盛り上がり感は忘れられません。本当に一人だったら思いつかなかったアイデアです。



花澤
自分の場合は業務内容の引き出しが多すぎたようで、最初に千葉日報デジタルさんに「もっと絞りましょう」と言われました。そしてどんどんフォーカスしていって、「切る」だけのプレゼンで8分は長いなと。

そこで自分たちがやっている、ロープで登って木を切るロープアクセスや特殊伐採の手法を、現場で撮った写真を繋いで動画にしようという流れができました。そうすれば話して説明するよりも、皆さんにより理解してもらえます。

あとは、木を切っていますだけで終わらないように、伐採工事の単価設定や森林の継続管理の提案など、ビジネス部分のモデルプランをキャッチボールしながら構築してもらいました。脱線しそうになると、的確に本線に戻していただいたことが印象深かったです。



石井
実際に木の上で作業されている花澤さんの視点で撮った動画は、こんなに高いのかとインパクトがありましたね。デジタル化のおかげだと思います。

村山
花澤さん同様、私もたくさん言いたいことがあったため、内容の取捨選択に感謝しています。皆さんもおっしゃっていましたが、すごく和やかな雰囲気で会話ができて、プレゼンもディスカッション形式で組み立てられたのが、とてもやりやすかったです。

あとは、プレゼンを組み立てる時の考え方なども教わって、自分の武器が増えた実感があります。今回のオーディションの観覧者の年齢層、人数、会場の雰囲気などを踏まえて、いきなり人事支援の内容を説明するよりも「人事の悩みってありますよね」という投げかけから始めるなど、導入部分のレベル感まで緻密にシミュレーションしました。

プレゼンの練習は4日間ありましたが、これが12日間であればおそらくここまで完成していなかったと思います。本当に濃厚で、有意義な3ヶ月間でした。

 

多くの反響を力に変えて、新たなビジネスと地域貢献に踏み出す

 ––––今回の経験を、今後のビジネスにどのように活かそうとお考えですか?

村山
これまでは人事のサービス業、コンサル業と実務の代行をしていましたが、ビジネスオーディションを通して、講師として話すことで自分の価値提供に繋げたい気持ちが芽生えました。

これはプレゼンの考え方やどう相手に伝えるかなど、オーディションで学ばせていただいた知識を使いたいなと思っています。既に営業は始めていますが、その際にもYouTubeのビジネスオーディションのチャンネルリンクを申込書に添付して、活用させてもらっています。



石井
私も本番の模様をYouTube配信で流すなど、デジタルツールを駆使した施策は面白いと思いました。今回の製品ではベビーカーへの取り付けを想定していますが、遮熱剤のメーカーも発表の配信を見てくれていたようで、収縮性や耐久性といった残りの実験には前向きです。

ただし、発表終了後に問い合わせが来たのは屋根に取り付ける方でした。これはある意味、当初の思惑は間違いではなかったということです。お客様に関心を持っていただく目的は達したのかなと、反響自体はとても嬉しかったです。



花澤
オーディションが終わった後に、林業の世界がわかったとか、入り口として勉強になりましたと言ってくれる方がいて、設計ではなく「木こり」でピックアップしてもらって正解でした。それに加えて現在、特殊伐採の世界では挑戦的な若手が全国的に増えています。そういった方々に、チェーンソーで木を切ることを入り口に林業の勉強をしてもらいたいです。

林業は業界的にはニッチなので、特殊伐採をアピールすることで、造園業者の「剪定から伐採へ」の流れが作れればいいなと思います。林業に流入する人材が増えれば森林の整備にもつながりますし、これは少し大きな夢ですが、見放されつつある地方の魅力が再発見、活性化されるのではと期待しています。

坂本
今回のオーディションを通して、私が思ってもみなかったアイデアや、逆に私がやりたかったアイデアの展開を示唆していただき、おかげさまで発表後には何件も手書き看板の引き合いをいただいています。加えて、街を活性化するのに手書きアートをお願いされたり、市原市内の高校で生徒さんたちに教えたりといったお話もいただいています。

私が発表したサブスクリプション型のモデルが広まれば、同じ業界の手書きアーティストさんへの活路にもなると思います。ビジネスに展開していくのと同時に、地域の方と老若男女を問わずに、自由な時間、息抜きの時間になるようにチョークアートを広めていく活動もしたいです。せっかく市原で活動しているので、いただいたアイデアは全て試してみて、地域に還元できれば嬉しいです。

––––ありがとうございました。


シティプロモーションに力を入れる木更津市様にて、職員向けの広報研修を開催しました。プレスリリースの有効活用に向けて、プレスリリース配信大手PR TIMESの担当者を講師に招き、ワークショップを交えながら実践的に活用方法を学びました。

プレスリリースは、従来はメディア向けに情報を届けるものでしたが、ウェブ上でも展開されるようになり一般消費者にも直接届くようになっています。こうした点を踏まえ、「タイトルを付ける際、ウェブでも読まれやすいよう冒頭30字以内に大事なキーワードを盛り込むことが重要」などのアドバイスを行いました。

研修の後半では、アドバイスに基づき実際にプレスリリースのタイトルを考えるワークショップを行いました。参加した職員は、具体例を基にどういう視点でタイトルを切り取るかを実践的に学んでいました。

本研修は木更津市様が本年度実施しているシティプロモーションサポート事業の一環で、同事業を千葉日報デジタルにて担当しております。千葉日報デジタルとPR TIMESは業務提携を結んでおり、千葉日報デジタルが研修会の企画・運営をコーディネートしました。

木更津市様が2022年度展開するシティプロモーション事業について、千葉日報デジタルが「シティプロモーションサポート事業業務委託」の公募型プロポーザルで受託事業者に決定しました。

木更津市様は今年度、市制施行80周年を迎えるのを機に、デジタルを活用した新たな情報発信を含めたシティプロモーションの強化を進める計画です。

千葉日報デジタルは、新聞社グループの持つ情報発信ノウハウやネットワークなどを活用しつつ、伴走型で木更津市様のシティプロモーション事業のサポートを展開して参ります。

コロナ禍で社会経済活動のあり方が大きく変わる中、地域事業者も自社の事業のあり方を見直していかなければならない時期に差し掛かっています。これまで「当たり前」とされていた方法が通用しづらくなる時代において、地域事業者はどんな方向に進んだらいいのか――。

そうした課題の解決に向けて、千葉県横芝光町で3月、経営層が集まって「次の一手」を考えるワークショップが開催されました。その模様をレポートします。


「同じことをやっていても事業拡大は難しい」

「今までと同じことをやっていても事業拡大は難しい。新しいことを始めなければ」

「受託業務ばかりで『待ち』の営業になっている。自社ブランド展開ができないか」

「地域の従業員に働き続けてもらうには、どんな職場環境が望ましいか」

3月にもかかわらず雪がちらちらと舞っていたこの日、横芝駅前情報交流館「ヨリドコロ」に地域の経営者や横芝光町商工会の職員ら8人が集まり、こうした経営をめぐる議論をざっくばらんに交わしていました。

この日開かれていたのは「会社経営の『次の一手』を一緒に考えませんか? ~プロモーション視点を取り入れた事業再構築を知るワークショップ~」。横芝光町商工会の関係団体・横芝光町雇用管理協議会と千葉日報デジタルの共同企画です。

コロナと経済の両立をどうするか?

はじめに、横芝光町商工会経営指導員(3月当時)の鈴木茂さんが、趣旨をこう切り出します。

「コロナと経済の両立が大事になってきました。『グレートリセット』という言葉も出てきたように、コロナ禍は社会の大きな転換期に差し掛かっています。そうした中、国も事業再構築補助金などの事業を新しく見直す取り組みを後押しする仕組みをつくっています。こうした視点で皆さんの事業について意見交換ができればと考えています」


事業再構築補助金、獲得の実際

続いて、横芝光町商工会のサポートで実際に事業再構築補助金を獲得した2社のインタビューです。ここからは千葉日報デジタルの中島が進行役を務めました。

まず、農業生産法人「理想郷」のケース。自社で取り扱っている米粉を使い、新たに米粉パンを製造・販売する事業再構築を計画していることが紹介されました。

次に、介護施設を運営する「グループホーム光」のケース。介護保険制度の範囲で事業を行うため事業拡大が難しい中、新たな視点で成長につなげようと「運動特化型デイサービス」などの新規事業を進めていくと説明がありました。

いずれも既存の自社事業のリソースを生かしつつ、将来に向けて新たな「次の一手」を打とうとする内容になっています。

消費者・利用者目線で必要な「プロモーション」

どちらも事業再構築補助金を獲得しているため、計画書では自社の強みと市場環境を掛け合わせた現状分析などができています。ただ、今後実際に事業化していく際には、消費者・利用者に向けたプロモーションや周知・集客活動が必ず必要になってきます。

進行役の千葉日報デジタルは、事業者のニーズに合った情報発信サポートを得意とするため、競合と差別化するためのブランド戦略や販売ターゲットの設定、商圏や客層に合った周知・集客方法といった具体的なアドバイスを織り交ぜてインタビューを進行していきました。


ワークショップならではのざっくばらんな情報交換

後半は、他の参加企業の課題も深掘りしていきます。例えば製造会社からは「今は受託業務が複数来ているが、自分たちでコントロールできないので『待ち』の営業になりやすい。自社ブランドの展開ができないか」といった話題がありました。

また、別の製造会社からは「比較的安定して地域の方に従業員として働いていただいているが、さらに働きやすい職場にするにはどんな改善をしたらいいか」という問いかけがありました。会場からは「うちの場合はこんな風にしている」などワークショップならではのざっくばらんな情報交換が生まれていました。

「次の一手」のヒントを得る場に

この記事だけでは一見ただの雑談だけで終わってしまったように見えますが、ワークショップ終了後には、個社同士が個別に相談している姿も見られ、この雑談をきっかけに新たな協業が生まれそうな雰囲気もありました。

参加者の一人からは「ただの『お勉強』のセミナーでもなく、ただの『飲み会』のような他愛ない会話でもなく、ちょうどその間でざっくばらんに話をしつつ、事業のヒントが得られた」とワークショップならではの気づきがあったことが語られました。

今回のワークショップを通して、参加各社の課題感とそれに対するリアクションが「気づき」を促し、各社が次に打つべき「次の一手」のヒントが得られたことは間違いないようです。

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千葉日報デジタルは、地域の経済団体との連携で地域事業者の情報発信サポートを展開しています。今回のようにワークショップ形式での開催も可能です。

ご興味がおありの方はお気軽に「お問い合わせ」からご連絡いただければ幸いです。

2021年9月から広報サポートの連携を結んでいるJAグループ千葉様の広報担当者研修に、千葉日報デジタルが講師として参加させていただきました。

2月下旬に行われた研修では、デジタルを活用した広報手法のご紹介だけでなく、「本質的な広報活動」の実現に向けた取り組むべきポイントなど、デジタル時代に適した広報のあり方をご説明しました。

2021年10月に「情報発信等に関する連携協定」を結んだ木更津市様の職員向け広報研修に、千葉日報デジタルが講師として参加させていただきました。

メディア取材の素材となるプレスリリースの基本的な作り方に加え、ニュースとして取り上げられやすくなる魅力的なアピール方法など、デジタル時代に適した広報のあり方をご説明しました。

両者は今後、協定を踏まえ、新たなシティプロモーション方針の策定を目指し、ワークショップなども展開中。市内外への効果的な情報発信を協働で模索していきます。