「市原未来創業プロジェクト」は、市原商工会議所と千葉日報デジタルがタッグを組んで展開する「新しい事業者支援」の取り組みです。昨年度参加した10人の事業者(創業者含む)は、販路拡大・取引先拡大をできるだけ早く実現するため、1カ月半の短期集中でプロジェクトに取り組んできました。ここではプロジェクトがどんな流れで進んできたかの舞台裏を時系列で振り返ります。

◆「市原未来創業プロジェクト」の詳細は、下記PDFでご確認いただけます。
千葉日報紙面PDF
(※ファイルサイズが20MB程度ありますのでご注意ください) シティプロモーションの強化に取り組む袖ケ浦市では、若手職員の広い視野と柔軟な発想をシティプロモーションに生かすべくプロジェクトチームを発足させています。2023年度に取り組んだのはその名も「袖が裏チャレンジ」。「袖を裏返すポーズ」をショート動画で投稿する斬新な企画でした。チームの一員として企画を推進してきた秘書広報課主任主事の柿本健さんに、取り組みのきっかけや専門家によるサポート、今後のプロモーションの方向性などプロジェクトを振り返っていただきました。


(袖ケ浦市 秘書広報課 主任主事 柿本 健さん)

若手主体の動画企画を、第三者的視点でブラッシュアップ

––––今回の動画企画の概要を教えてください。
企画政策部秘書広報課 主任主事 柿本 健さん(以下、敬称略)
「袖が裏チャレンジ」と銘打った今回の動画企画は、地名と同じ響きの「袖を裏にする」ポーズをする様子をスマホ等で撮影して、SNSに投稿することで参加できます。2023年度のプロモーション計画では、当初袖ケ浦市の強みを押し出そうとしましたが、なかなかピンとくるものがなく、では逆に弱みはと考えると、知名度が低いことだと思いつきました。そこで、まずはネームバリューの向上を目的に、ショート動画を使って拡散を狙ったプロモーションを行うことになりました。

今年度のプロモーションを担うメンバーは7名です。やはり市のプロモーションは担当課だけでなく、全庁的に行う必要がありますし、時流を捉える情報感度も重要です。そのため、普段は廃棄物処理や庁内のシステム管理、自治会との調整など、シティプロモーションとは直接関連しない業務を担当する、20~30代の若手職員で庁内横断的にチームを編成しました。各々の幅広い経験、年齢層の異なる人間がざっくばらんに意見を交わせる点がメリットだと思います。


(「袖が裏チャレンジ」のTikTok動画)

––––「袖が裏チャレンジ」実施までの、具体的な流れを教えてください。
柿本 施策を検討する中で動画をメインに据える形は比較的早く決まりましたが、難航したのはその中身です。プロジェクトメンバー全員で何度も企画会議をしましたが、当初は良いアイデアが浮かばず、先行きが不安な時期もありました。突破口になったのは、何回目かの会議であるメンバーが、過去に袖ケ浦海浜公園で「同時に袖を裏返した人数」で、ギネス記録に挑戦していたイベントのことを思い出したことです。袖ケ浦市にちなんで「袖を裏返す」という分かりやすさと、ネームバリューに直結する動作、動画への収まりやすさに、メンバー皆が「これだ!」と直感したように思います。

企画の拠り所を見つけたあとはスムーズでした。動画の内容はこちらから一方的に発信するのではなく、コロナ禍に流行ったバケツリレーチャレンジのように、一般の方が代わるがわる動画を投稿してもらう形式が相応しいと判断しました。さまざまな人に参加を促すことで何本もチャレンジ動画が投稿されますし、多方面から名前が売り出せるのではと、今回の「袖が裏チャレンジ」のスタイルが誕生しました。


(「袖が裏チャレンジ」のやり方を紹介するYouTube動画)

––––今回の動画企画では新しい試みもされたそうですが?
柿本 プロジェクトメンバーは毎年4月に入れ替わるため、その意味では、常に新鮮な気持ちで企画に挑戦していますが、2023年度は7月に千葉日報デジタルさんと「情報発信に関する連携協定」を結んだことが大きな変化です。連携協定は袖ケ浦市が行う情報発信にプロの視点を加えることで、プロモーションの強化につなげる狙いがあります。その一環として、今回の企画では、プロジェクトチームの会議にオブザーバーとして参加し、助力いただきました。

例えば、当初動画企画の内容は、市の良いところをアピールする従来路線でしたが、そこで千葉日報デジタルさんが「SNSに出ている自治体の広告は、街の名前を隠したらどれも同じで個性がない」と提言されました。すると、皆が素直にそうだよねと受け止めて、そこから今までのやり方を変えて、弱みを見せたらどうかという方向性が生まれました。こうした通年のプロジェクトは、庁内で従事する職員はだんだんと視野狭窄になりがちです。しかし、第三者が引いた視点で見て、会議のたびに「こういうことですよね」と整理してもらえると、目的や方向性が常にクリアになる点が良かったです。

加えて、動画制作についてもテロップや構成などを一つのパッケージとして意識する、リリースは、まず動画コンテンツという受け皿が揃った段階で打ち出すなど、細やかなアドバイスをいただきました。そのおかげもあって、「袖が裏チャレンジ」ではプロモーション全体の統一感や継続性が保てています。私たちが船を動かす船員だとすれば、千葉日報デジタルさんはその水先案内人として、プロジェクト自体を、どんどん良い方向に進めてくださる感触がありました。


(若手職員のチームに千葉日報デジタルが加わり「袖が裏チャレンジ」の動きを検討していった)

圧倒的な反響を追い風に、一体感あるプロモーションを目指す

––––動画企画の反響はいかがでしょうか?
柿本 私がこれまで手がけたプロモーションの中では、最も多くのメディアから問い合わせをいただいています。実際にテレビや新聞媒体への露出が増えていますし、動画自体も40本以上投稿していますが、全て数万再生とかなりの手応えを感じています。

また、庁内的な話では、過去にもSNSで子育て世代の方をメインターゲットに袖ケ浦市のPR広告を出したり、品川駅にデジタルサイネージを掲出したりと、シティプロモーション施策にはかなり力を入れていました。しかし、自治体色が強い硬派なプロモーションが主体だったことや、効果が目には見えなかったこともあり、あまり庁内との一体感を持てていませんでした。ところが、今回のチャレンジでは、若手職員のアイデアが十分に活かされて、プロモーションの雰囲気がガラッと変わりました。おかげで先輩方や他部署の方からも、面白いこと考えるねと、称賛の言葉を多数いただきました。若手職員にとっては、自分たちの取り組みに反響があることが励みになっていると思いますし、シティプロモーション全体としても、アイデアで勝負できたことが自信につながっています。


(柿本さんと袖ケ浦市マスコットキャラクター「ガウラ」)

––––今回の動画企画を踏まえて、今後取り組みたい市のPRはありますか?
柿本 動画プロモーションの強みを実感したため、動画広告は袖ケ浦市の未来への投資として、戦略的に実施していきたいと思っています。最近は市長が市政を紹介する動画を作ったり、千葉日報デジタルさんの協力で情報発信力を高める取組ができたりしているので、情報発信の質だけでなく経路も強化していきたいです。

また、「袖が裏チャレンジ」に関しては、撮影自体は想定以上に順調にできましたが、そこから先の、動画を見てリレー形式で投稿する動きになかなかつながっておらず、2024年度以降は、動画投稿でインセンティブがつくような仕組みづくりが必要だと考えています。「袖が裏チャレンジ」はようやく火がつきはじめたところなので、袖ケ浦市民が撮影する時は、袖まくりのポーズが定番というくらいのムーブメントを作り出せるように、継続して盛り上げていきたいです。 千葉日報デジタルと千葉信用金庫は共同で、取引先企業のビジネス成長を後押ししようと、経営に不可欠な情報発信のノウハウを学んでもらうワークショップ企画を始動しました。10月5日に開かれた初回には飲食・食品関係の5社が参加し、自社の魅力をどう伝えていくかを話し合いながら学びました。

この企画は、9月に両者が「地域ビジネス活性化に関する連携協定」を締結したことを受けてスタート。ワークショップは千葉日報デジタルが進行役を務め、消費者に魅力的に感じてもらえる商品の見せ方や発信に必要なコンテンツの作り方、実際の発信方法などを雑談形式で議論しました。

初回に参加したのは、POTRIVER▽いいなベトナム料理店▽メディアサイトウ▽オランダ家▽増一屋。希望者にはアフターフォローの個別相談にも応じていきます。

ワークショップ企画は「納得感のある深い学び」を目指し、あえて少人数で開催するのが特徴。今後も業種などを変え継続的に開催することで、地域ビジネスを担う地元企業を情報発信の側面からサポートしていく狙いです。

地域で活躍する事業者を支援するために、各地に存在する商工会議所。支援施策の中には、既存会員企業のビジネス成長サポートや将来的な事業者の確保に向けた創業支援などが含まれます。具体的な支援は各企業との個別相談もありますが、不定期にセミナーを開き、専門的な知見を周知することを行うのも一般的です。

そうした中、流山商工会議所が今回スタートさせた「新しい事業者支援」は、参加者わずか6社。1人の講師が大勢の参加者に向けて話すセミナーとは真逆の規模感でした。では、なぜ流山商工会議所は、わずか6社に向けての事業者支援をスタートさせたのでしょうか。「新しい事業者支援」の取り組みと狙いをリポートします。


「正解がわからないんですよね」 雑談から考えるビジネス課題解決の糸口

2023年8月、千葉県流山市の「KIJI CAFE」に市内の事業者6社が集まりました。参加したのは、KIJI CAFE(飲食業)、京和ガス(ガス事業)、アズオフィス(シェアオフィス運営等)、オフグリッドエナジー事務所(ドローン点検事業)、ハム・ソーセージ職人の店Umami(食品製造販売)、焼き菓子屋fossette+(菓子製造販売)とバラエティに富んだ面々です。

「インスタの投稿ってどんな形でやればいいのか、正解がわからないんですよね」
「うちの場合は、投稿時間とか内容のフォーマットをある程度決めておいて投稿するようにしてますよ」
「へえ、時間も決めた方がいいんですね」
「割と夜の時間帯にスマホ見る人が多いんで、うちはそうしてますね」
「なるほど」

こうした参加事業者同士の話に、今度は「情報発信の専門家」として同席していた千葉日報デジタルの担当者が、専門家目線でのアドバイスを続けます。

「インスタは効果的に使えば集客やお店の認知向上に力を発揮します。ですが、漫然と、なんとなく始めてしまうと、意外と労力や手間だけかかって運用が大変になることもあるんですよね。なので、最初に『どんな目的でインスタを使うか』『どういうターゲットにこのインスタを見てもらいたいか』などを考えてから始めると効果を感じやすいですし、次の改善にもつなげやすくなりますよ」

事業者がリアルに実践していることをさらに補足するようなアドバイスに、参加事業者はすぐさまペンを走らせ、メモを取ります。

こうした各事業者の課題についてざっくばらんに「雑談」しながら解決の糸口を見つけていくのが、今回、流山商工会議所が企画した「新しい事業者支援」のポイントです。


あえて小規模開催、あえて雑談 その狙いは?

流山商工会議所が「新しい事業者支援」として企画したのは「情報発信を考える学び交流サロン」。ポイントは、前述の通り小規模での開催です。各事業者が日々感じていながらも、なかなか言葉に出して考え切れていない中長期的な自社の課題について、あえて「雑談」をしながらその課題を見えるようにし、解決の糸口を見つけてもらう狙いです。

今回は、会員事業者の課題として多い販路拡大や自社のブランド確立などに役立つ「情報発信」をテーマに開催しました。開催にあたっては「情報発信の専門家」である千葉日報デジタルと共同で運営内容を決めていきました。

企画運営を担当した流山商工会議所の細井洋一さんは、狙いをこう語ります。
「会員事業者がご相談されることは、意外と目先の問題が多いんです。『このメニューを作りたいからどうしよう』とか『今こういう問題が起きているからどうしよう』というような。でも、今回学び交流サロンを通してお話しできたのは、もう少し長期的な話題。こういう話題で話し合うのは、通常の個別相談のような一対一ではなかなかできないと思うんです。そういう意味では、課題をお互いに投げかけてみんなで考えるというのは長期的には得るものがあるんじゃないかと感じました」


「メディア視点から面白く見える魅力」を深掘りする

こうした狙いを参加事業者に実感してもらうため、学び交流サロンは6社限定で設定。7月から毎週月曜日の午後に3週連続で開催し、同じ事業者が3週連続で参加して学んでもらう形をとりました。

プログラムにも工夫を凝らし、各回の議題はこのような形で設定しました。
①オリエンテーション+自己紹介
②自社の魅力を深掘りしてみよう
③深掘りした魅力を発信してみよう

ポイントは「単純に情報発信ツールを使いこなすことを学ぶだけの講座ではない」という運営方針です。
・自社のビジネス成長の「目的」(=売上アップ、認知拡大など)に合わせて
・どんな「手段」(=SNS運用などの情報発信)を使うべきか
という「本質」の部分まで踏み込んで理解いただけるようにしました。

そこで重要になるのが、「②自社の魅力を深掘りしてみよう」のパートです。ここでは千葉日報デジタルとの雑談を通して、参加事業者の商品やサービスについて「メディア視点から面白く見える魅力」を深掘りしていく作業を行いました。

例えば、ハム・ソーセージ製造Umamiさんの場合は「日本人の口に合うおだやかな塩味」という商品特徴から「減塩」というキーワードにつなげ、「塩分を気にする人でも食べやすい」という視点で「メディアに取り上げられやすく面白く見せる」ことを、参加者同士で考えました。

また、オフグリッドエナジー事務所さんはドローン点検事業という競合が多い事業領域に新規参入しようとしていたことから、自社にしかできない空撮を活用したサービスを検討し、事業の立ち上げ~メディア戦略に至る流れを議論しました。

このように「メディア視点から面白く見える魅力」を各事業者で探った上で、その魅力をどう発信していくかを具体的に考える「③深掘りした魅力を発信してみよう」のパートにつなげました。


「自分のお店を見直すきっかけに」 雑談が生み出した客観視点

こうした構成が功を奏し、全3回終了後には参加事業者から好感触の反応がありました。

<KIJI CAFE>
自分の事業を立ち止まって見直すいい機会になった。皆さんの事業を冷静に見て、自分の事業の「鏡に映った姿」のように見えてそれも参考になった。

<京和ガス>
まず自社の「目的」をどこに設定するかを考える必要があることが分かって良かった。皆さんの意見をたくさんもらえたのも勉強になった。

<アズオフィス>
自社サービスを練り切れていないという印象が強くなったので、軸を決めて深掘りしないといけないと感じた。同業者の皆さんの気持ちも分かって良かった。

<オフグリッドエナジー事務所>
自社サービスで強化しないといけない部分を明確にして、独自のコンテンツをどう作っていくかを考えないといけないことがよく分かった。

<ハム・ソーセージ職人の店Umami>
自分が思う事業の強みと皆さんから見た強みが少し違ったりするのも理解できて良かった。これからに生かしていきたい。

<焼き菓子屋fossette+>
皆さんの経営上の悩みを聞けたのも参考になったし、もう1回自分のお店を見直すきっかけにもなった。定期的に催されるといい。

流山商工会議所では、こうした反応を受け、さっそく8~9月に第2弾の「情報発信を考える学び交流サロン」の開催を決めています。担当の細井さんは「ファシリテーター(進行役)がいることが重要。事業者さん同士だけではなかなか話し合いにならないテーマでも、ファシリテーターがいることでこういう実のある議論ができると感じています」と語り、引き続き千葉日報デジタルと連携してサロン開催を行っていきます。

少人数での「雑談」を通してビジネス成長に必要な課題解決の糸口をつかんでもらう「情報発信を考える学び交流サロン」。流山商工会議所が始めた「新しい事業者支援」は、こうして一歩目を踏み出しました。今後、創業スクール卒業生のアフターフォローや、会議所会員企業のビジネス成長に向けた取り組みとして、活用が広がっていくか期待が持たれます。

 東京都に本社を置くシステム開発企業、大崎コンピュータエンヂニアリング(OCE)。千葉県内を中心に行政や企業向けの業務システムや情報通信インフラの構築を多数手掛け、現在は顧客向けのデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に力を入れています。

近年は「お客様のDX推進には、まず自分たちから」との考えのもと、3つの重要戦略を立て社内のDX化にも力を入れ推進しています。社内DXの推進を統括する事業推進統括部NB推進室長の森雄介さんに、具体的な取り組みから社内に起こった変化、見えてきた課題を伺いました。

■社内DX推進へ、意欲的な取り組みが継続中

––––自社内のDXでは具体的にどのような取り組みをされていますか?

事業推進統括部NB推進室室長・森雄介さん(以下、敬称略)

当社は「信頼とサービスを基本にお客様の確かなDXを実現する」を経営ビジョンに掲げ、その実現のため「リアルタイム経営の実現」「非知的労働時間の削減」「DX実現に向けた人材育成、確実な品質向上」の3つを重要戦略としています。

「リアルタイム経営の実現」では、以前から使っていたグループウェアを今年刷新します。ポータルサイトを再構築したり、チャット機能を入れたりすることでワークフローを新しくして、これまでのスケジュール管理や会議室共有をする機能から、社内情報の流通を良くするような、情報連携基盤的な位置付けに再構築をしています。

2番目の「非知的労働時間の削減」では、RPARobotic Process Automation)の導入を推進し、社内活用しています。例えば、営業の原価管理は仕入元帳と原価計算書のチェック業務を、これまでは事務担当が行っていましたが、RPAの導入でソフトウェアロボットによって自動化しています。

3番目の「人材育成、品質向上」では、OCEアカデミーという教育訓練専門の部署を立ち上げました。これまでは営業・SE・工事と部門ごとに人材教育が完結していましたが、OCEアカデミーの設立により、職種の垣根を超えて共通して習得してもらいたいスキルを学べるようになりました。共通スキルの42講座は動画として作成し、教育サイト上で閲覧できるようになっていて、全社員に必ず受講してもらう形をとっています。

––––社内DXの推進によりどのような効果が出ていますか?

「非知的労働時間の削減」であれば、原価管理などの営業事務、仕入れ登録などの購買事務にRPAを使い始めたことで生産性の向上につながっています。

DX実現に向けた人材育成、確実な品質向上」では、OCEアカデミーの設立により、DX推進に必要な人材育成や、個人のキャリアに応じた学び直しの機会の増加につながっていると思います。各部門のプロジェクトマネージャーやDXを牽引できる係長クラスの人材を「現在の2倍」にする目標を立てて、新しい講座を随時検討するなど継続的な取り組みを実践中です。

■ポイントは「情報の伝え方」。DX成功事例の積極的な発信へ

––––社内DXの実践による将来的な目標はありますか?

お客様にどうやって効果的に製品、サービスの情報を届けられるかがポイントだと考えています。まだ数は少ないですが、お客様がDXを進めたことによる改善事例や社内DXで効果的だった事例を、ホームページなどを通じてお客様にお伝えしていきたいと考えています。

こうした事例紹介などを通して、今後はより多くお客様のためになる話題をお届けすることが目標の一つです。それをご覧になったお客様から、新たな業務のつながりができれば嬉しいですね。

––––お客様に情報を伝えていくためにどのようなことに取り組んでいますか?

私の部門では当社のホームページをよりお客様にアピールする業務も行っています。先ほどのお客様や自社DXの事例紹介など、情報発信については2022年から千葉日報デジタルさんと連携して進めています。

例えば、ホームページの閲覧数を増やす目的でGoogle広告を打っていますが、私たちにはその達成数値が妥当なのかが今ひとつわかりません。そこで、毎月の閲覧数や改善策などにご意見をいただいています。また、ホームページ内の誘導動線やホームページで何を発信していくかなど、方針や目的まで含めた総合的なアドバイスを受けながら改善を進めています。

––––今後、情報発信でどのようなことに取り組んでいきますか?

ホームページのリニューアルを考えていますが、単に全体を作り変えるのではなく、お客様と直接つながるような仕組みを持った形にできればと考えています。

例えば、現在、お客様からいただいたアンケートなどのフィードバックはまだ集約しきれていない気がしています。フィードバックの方法も営業社員が現地に行ってヒアリングするスタイルが常です。

こうした部分についてもホームページをうまく活用できないかと考えています。ホームページが、お客様との接点を増やし、量・質ともに良質なコミュニケーションの窓口となるようなイメージです。こうしたリニューアル部分でも千葉日報デジタルさんにアドバイスをいただきたいと考えています。

大崎コンピュータエンヂニアリング(OCE)は、東京都に本社を置くシステム開発企業です。千葉県内54自治体に導入済みの総合行政ネットワーク「LGWAN」からのシステム提供をはじめ、千葉県を中心に、行政や企業向けの業務システムや情報通信インフラの構築を多数手掛けてきました。

近年では、コロナ禍で生じたテレワーク需要や国が進めるデジタル化の施策を受け、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に力を入れています。

千葉県の自治体がDXを推進するために、OCEがどのような形でサポートを行っているか――。現場を指揮する公共DX推進部長の薄井直毅さんに、自治体DXの最前線を伺いました。



■市民サービスの向上を目指し、総合的なDX化を提案

––––千葉県の自治体向けにどのようなDXサービスを提供されていますか?

公共DX推進部長・薄井直毅さん(以下、敬称略)

国がDXの全体計画を作って各自治体に推進を奨励している現状を踏まえ、当社ではその方針に沿って業務を進めています。

具体的には、市民が自治体に何か申請する際に、これまでは直接窓口に出向いて、そこで用紙等に記入することが一般的でしたが、今は皆さんがスマートフォンをお持ちでインターネット環境があるため、そこから申請できるような仕組みづくりを行っています。

さらに、自治体業務を電子化するには、データを安定的に流通させるシステムも必要なため、アクセスに関わるネットワーク機器やインフラ部分の導入にも積極的に関わらせていただいています。

––––自治体向けのDXで特に意識している部分はどのような部分ですか?

薄井

お客様である自治体からは、「窓口機能を順次デジタル化してほしい」「システムを入れた後の運用面も含めて周辺環境をデジタル化してほしい」といったご要望が多いです。

こうしたご要望にお応えするため、「当社のサービス提供を通じて市民サービスの向上を果たす」ことを念頭に、各種サービスの提供を行っています。

市民の方々がストレスなく行政サービスを利用するには、バックオフィスなど裏方業務の改善も必要です。そうした裏方業務のDXも一手に引き受け、総合的なデジタル化を目指しています。

システムの入り口部分を電子化しても、その後の工程で、結局紙で印刷する状況が生まれては元も子もありません。そうならないように、お客様個別の優先課題を把握しながら、トータル的なご提案を差し上げています。

––––自治体DXの分野でOCEの強みはどこにあると考えますか?

薄井

お客様が要望されるDXの切り口はさまざまで、全システムに関わるエンジニアから、ネットワーク部分の技術者、配線周りから構築する施工部門まで、全員の力が必要なことが多いです。こうした通信だけでなく、施工部分までサポートできるのは私たちの一番の強みだと思っています。

加えて当社にはデータセンターもありますので、大企業にはないスピード感を持って、情報・通信環境の整備から保守・運用面まで、総合的に課題に向き合うことが可能です。



■現場の課題を解決し、DXの真の価値を示したい

 ––––お客様からの反響で印象に残った声はありますか?

薄井

コロナ禍において、市民の方々が在宅勤務の自治体職員とコミュニケーションを取るには電話かメールだけにツールが限られていました。それが、最近では自治体向けのチャットツールの導入で、今まで以上に円滑なコミュニケーションが取れるようになった例があります。

また、会議を例にとっても新規のコミュニケーションツールの導入で、打ち合わせの質が上がったり、一箇所に集まらなくても十分に情報共有ができたりと、自由度が高まったことで、とてもお喜びいただいた経験があります。

お客様からこうしたお声を頂戴すると、DX化の真の価値は現場の課題解決にあると強く感じます。

当社では、自治体向けに「自治体ジャーナル」という情報誌を発行しています。そこでは先ほどのチャットツールの話など、お客様にヒアリングした導入効果の話題を事例として掲載しており、自治体の課題解決のお役に立てるよう情報共有しています。

––––顧客とのつながりを強化するために、どのようなことに取り組んでいますか?

薄井

当社は本社が東京ですが、お客様である自治体とのつながりは千葉県内が多くあります。また、コンピューターや通信関連のシステムを構築してサポートするのは得意分野ですが、「情報発信」に関しては自治体向けの情報誌を内製してはいるものの、ほぼ手探り状態です。

そこで2022年から千葉日報デジタルさんとタッグを組んで、情報発信の方法やホームページの活用法など、さまざまにご指導いただきながら取り組みを進めています。

当社のお客様の成功事例や有益な情報を上手に届けられるようにするには、まだ多くの学びが必要だと考えています。そこはメディアの知見があり、地元密着かつデジタル領域に詳しい千葉日報デジタルさんの強みを生かしていきたいと思います。

––––自治体のDX推進について、OCEとして将来の展望を教えてください。

薄井

自治体DXの実現は、自分たちだけではできません。現在、ITやシステム関連業界では、さまざまな新しい技術やソフトウェアが日々開発されていますので、それを自分たちの会社にも取り込んで、新しい事例に向き合いたいと考えています。

これまで自治体の中だけでの課題解決はなかなか難しい面がありましたが、民間の技術や知見をうまく組み合わせることで、自治体や市民の皆さんの生活が、より豊かになるDX実現のお手伝いをしていきたいです。


創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」は、2022年10月の集大成となるビジネスオーディションをもって成功裏に終了しました。この活気ある創業者支援イベントを市原商工会議所と共に、裏側からリードしたのが千葉日報デジタルです。

今回は、ビジネスオーディションに至る3段階の支援ステップの内容から、事業実施の狙い、イベントを成功に導く仕掛けなどを千葉日報デジタルの事業キュレーター・中島悠平がインタビュー形式で解説します。

 

事業の「芯」を魅力的に見せる、伴走型のサポート


––––本番までには、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンの3段階のステップがありましたが、その具体的な内容を教えていただけますか?

ワークショップは2回行う予定で、全ての参加者に出席していただきました。初回は自己紹介を兼ねて、各々の事業を10分程度で語っていただき、互いの理解を深めました。

ほぼ雑談のような感じで終わりましたが、裏側の意図には、この場からある種の創業者コミュニティのようなものが生まれて育ち、街全体の活性化につながればという思いがありました。それもあって、可能な限りコミュニケーションを取る場を作りました。

そこから2週間ほど後に実施した2回目では、このステップの趣旨であるデジタルマーケティングを深掘りして、お客さんの集め方や事業の周知方法についてディスカッションをしました。



例えば、「○○○○で税務調査とさようなら」をテーマにプレゼンした税理士の西村さんは、ホームページを持っていましたが、税理士会のひな型を借りて作っており、もう少し自分のオリジナリティを出したいというご希望がありました。

「おもてなしアートで集客・接客向上」の坂本さんはインスタグラムを使っていましたが、「自分の顔を出すのは恥ずかしい」と話していました。一般的なアーティスト兼代表という方は、自らがインフルエンサーになって、顔も作品もアピールすることがよくあります、というアドバイスもしました。

一方、「市原の太巻き寿司を世界へ」をテーマにプレゼンした上田さんは、10年以上太巻き寿司の料理教室を運営していた結果、教室のホームページのSEO上の価値が上がっていたことが、お話ししてわかりました。

––––そこから個別相談に移って、さらに事業を磨くわけですね。

はい、ワークショップは本当に“さわり”なので、全4回の個別相談を通して各参加者の事業を深掘りし、より魅力的に見せる工夫を施していきました。

個別相談の初回は、まず「アイデアの先鋭化」から始めます。皆さんそれぞれ今の事業に思いはありますが、今回は最終的に8分間のプレゼンに収めなければいけないため、事業をいかに魅力的で、かつ分かりやすくまとめられるか、に頭をひねりました。

例えば、「日本初、高性能ベビー向け製品を発表!」の石井さんにはBtoBの路線からBtoCへの転換をご提案したり、チョークアートの坂本さんにはサブスク型モデルのアイデアをお出ししたりしました。個別相談は1回1時間しかないため、初回は千葉日報デジタルの経験とノウハウをフル活用し、先鋭化できそうなアイデアをまとめあげました。



2回目以降は、初回でまとめたアイデアをもとに、事業を具体化しつつ、プレゼンを見越して「どう見せるか」も検討していきました。皆さんスライドを使ってプレゼンするため、個別相談の中で写真の取捨選択や原稿のストーリーなどのブラッシュアップも行いました。

そして、最後のステップがプレゼン対応レッスンです。当初よりビジネスオーディションでは、会場に50名ほどの来賓を呼ぼうと市原商工会議所側と合意していました。それも一般のお客さんではなく、金融機関関係者、地元でご商売されている方、創業者の先輩など、BtoBになる方たちです。そこで「見せる」という意味では、こういった方々に刺さって、自分たちの商売を次につなげていけるような内容にすることを一番に心がけました。

例えば「木こり花澤 山を守る地域密着型SDGsビジネス」の花澤さんは、当日の仕掛けとして、普段の作業服姿でチェーンソーを持って登場する演出を施しました。まず見た目のインパクトで「木こり」というプレゼン内容に興味を持ってもらう狙いです。

また、「人事の力で業績アップ」の村山さんは、自身がエネルギッシュで内容が盛りだくさん過ぎたため、もう少し要約して核を決めましょうとアドバイスさせていただきました。



事業の芯を深掘りすることは大事ですが、それをどう伝えるか、どう見せて心を掴むかまで含めて、私たちで色々とアドバイスさせていただいたのが、個別相談とプレゼンレッスンです。

今回のビジネスオーディションは、経営計画や売り上げ目標を計画書的に具体化することよりも、プレゼンとして面白いかどうかが重視されたイベントです。事業の深掘りやプレゼンのレッスンは、当然そのゴールを意識してつくり込むことになります。

広報的な視点から、イベントに「一体感」を仕掛ける

––––オーディションの参加者は、マーケティングの総合的な視点が養われそうですね。

今回のイベントの裏のテーマは、広報宣伝の考え方や骨格を知って、体得していただくことにあります。3つのステップも、今回に限ればビジネスオーディションという場に向けて、自分達の事業をブラッシュアップする作業ですが、実は、やっていることは広報宣伝を組み立てるプロセスと全く同じ構造です。

イベントのゴールに向けた作業を違う形で横展開すれば、すぐにプロモーションスキルとして活かせる仕掛けが、各ステップには施されています。参加した方々は、この先、新規開拓しようとすれば、いつか「自分の強み、使用する媒体、伝え方」といったマーケティングの課題に直面するはずです。その時に今回の経験が必ず活きてくると考えています。

––––うちわを使った採点方法が面白かったです。

今回のビジネスオーディションは、うちわの裏表で「興味があります」と「もっと聴かせて」という2パターンを出せるようにしており、いわゆる“審査会”ではありません。これは商工会議所側との序盤の打ち合わせで、「参加しやすいフランクな雰囲気」を作るにはどうしたらいいかと考えた結果です。

こうしたオーディションには大体、審査員がいて、お客さんは蚊帳の外になりがちですが、今回はそうではなく、皆で彼らを応援する空気感を醸成したい思いがありました。

加えて、私たちの最大の強みである、「広報の視点から事業やイベントを組み立てる」視点も反映されています。イベントであればメディアに掲載された際に写真映えして、いかに「面白そうなイベントだな」と思ってもらえるかが肝です。そこから逆算して、会場に一体感を生んで、華やかさも演出できるツールとして、うちわの採用となりました。

 

地域の商工会議所との連携で、周囲を巻き込むイベントを育てる



––––初のイベントで、商工会議所との連携面はいかがでしたか?

当日はかなり大規模にやらせていただき、市原商工会議所の皆さんの準備には頭が下がる思いです。これ以外にも、参加者のパワーポイントの細かい設定や原稿修正の実務作業など、基礎的なバックアップを確実にしていただきました。

そのおかげで私たちは、参加者とのディスカッションやアドバイスに集中できました。市原商工会議所の皆さんは事務的部分、私たちは事業の深掘りと、うまく役割分担できたことで、お互いの強みが発揮できたと感じています。

––––周囲からの反響はいかがでしょうか?

来賓の皆さんからは、とてもいい発表だったとお褒めの言葉をいただきました。千葉日報デジタルとしてもこうした試みは今回が初ですが、期待以上の手応えです。

加えて、会場に設けた発表者用のブースも大好評でした。ブースにはプレゼン終了後から結果発表までの合間の30分程度に巡ってもらう想定でしたが、太巻き寿司を試食したり、チョークアートの作品に触れたりと、みなさんが積極的に立ち寄ってくださいました。



参加者のみなさんには、あらかじめブースにお客さんが来た際に、何かお渡しできる資料を必ず用意してくださいとアドバイスをしていました。単なる事業のお披露目の場ではなく、そこでお客さんを獲得するくらいのつもりで臨むための仕掛けです。

結果的には、当初もくろんでいたコミュニティのようなものが生まれて、地域の事業者の方が発表者である創業者を遠くから見守るのではなく、近しい関係を持てる場が作れました。

––––最後に、イベントを終えた率直な感想と今後の目標を教えてください。

私たちの仕事は本番前の最終リハーサルまでで、本番になってしまえば、あとは発表者が頑張るしかありません。ですが、当日の会場に行って皆さんのプレゼンを見終えると、ほっとした気持ちと、しっかりと発表できた喜びで、泣きそうになるぐらいに感動的でした。

これはやはり、この3ヶ月間の密度の濃さの表れですし、何より登壇した6名の方が、本気で頑張ろうとやってくださったことへの感謝の思いでもあります。

私たちの強みは、プロモーションや広報において「どういう風に見せるか」という視点から、逆算して事業や商品・サービスを組み立てることです。今回のイベントもこの視点を持って臨んだことで、成功に導くことができました。

ビジネスオーディションの終了後、発表に参加した創業者の何名かはアフターフォローのサポートも始まっています。プレゼンで発表した内容をより具体化し、実際の収益につなげていく意欲があり、これからさらにサポートを強化していきたいと考えています。

今後も、今回の市原商工会議所さんとのご縁を大切に、引き続き市原市での支援事業に関わらせていただき、創業者や既存事業者の発展に貢献していきたいと思っています。

 

市原商工会議所が千葉日報デジタルと協業して進めてきた、創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」。その総決算のビジネスオーディションは、盛況のうちに幕を閉じました。

成功の裏には、マーケティング視点を取り入れた双方向のコミュニケーションや、事業の「核」の可視化を心掛けた取り組みがあったようです。

今回は当オーディションを陰ながらサポートした市原商工会議所の3名の方にお集まりいただき、プロジェクト発足の経緯から、千葉日報デジタルとの協業のメリットまで、お伺いしました。

 

“継続性”を大切に、新・創業支援事業を開始



––––ビジネスオーディションを開始した経緯をお聞かせいただけますか?

市原商工会議所 産業振興部 部長・藤田 智成さん (以下、敬称略)
市原商工会議所は日頃創業支援に力を入れており、過去56年間は、起業家を募ったフェスタや創業スクールなどのセミナー形式の催しを行っていました。

しかし、近年はコロナ禍もあって、地域の経済が停滞して廃業が増えてしまっています。やはり、地域経済の活性化には、創業による新陳代謝をしていかなければならないため、3年前には「創業からの成功ストーリー発表会」を開催しました。

これは創業10年目くらいまでの、業績が伸びている経営者の方に体験談を発表してもらう試みで、発表者のビジネスと私たち商工会議所の取り組みを知っていただく狙いがありました。

結果的にはこれが成功を収めて、こうした発表の場を年間通してできないかと、千葉日報デジタルさんにご相談したことが始まりです。

––––今事業では、単発で終わらない継続性も大切にされたそうですが?

藤田
当初は資金調達のチャンスを提供したいと考えてピッチイベントの開催を予定していましたが、ビジネスパートナーを集めるだけでは単発で終わってしまう懸念があったため、議論を重ねた結果、しっかり前準備を整えられるオーディション企画の流れを考えました。

商工会議所の業務と言うのは会員の経営者を事務的にサポートすることが多いです。手続きが終われば段々と関係が薄れてしまう、この習慣を変えていかなければならないぞと。そこで、段階を踏んで参加者を成長させて、仲間意識を醸成する、「交流会+発表イベント」のイメージで構築しました。

 

デジタルを駆使した販路拡大&人材育成スキル、千葉日報デジタルと組んだわけ


––––ビジネスオーディションを進めるにあたり、千葉日報デジタルと連携された狙いはどこにあるのでしょうか?

藤田
私たちは事務的な対応を得意にしている反面、販路拡大スキルは不得手です。そこで外部の手を借りようとなった際に、広告宣伝のメディアと組みたいと思いました。

ちょうど時を同じくして、千葉日報さんが新会社である「千葉日報デジタル」を立ち上げるとお聞きして、これはぜひお願いしたいと思いました。

実は他にも数社の候補がありましたが、やはり人材やビジネスを育てていこうという「公共性」、さらに今後DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されるビジネス環境の中で「デジタルマーケティング」の部分で非常に知見をお持ちですので、最終的に千葉日報デジタルさんにお願いすることにしました。

––––具体的に印象に残っているサポートはありますか?

藤田
千葉日報デジタルさんからは、最初の頃の打ち合わせで、「単発のセミナーを辞めましょう」、「もう少し相手の事業を深掘りできる事業をしませんか」とご提案いただいてこの話が始まりました。ここは自分たちでも課題に感じていました。

今回はビジネスオーディションというゴールがあって、それに向けて何が必要かを探る過程で、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンという三段階の流れが確立されました。

これも千葉日報デジタルさんのご提案です。こうしたイベントを実施するにあたって、長期計画を練る経験が私たちには足らなかったため、ゴールから逆算した様々な段階を設定いただけたことはありがたかったです。

 

事業拡大に向けた、市原商工会議所のバックアップ体制が進化



––––千葉日報デジタルとの協業で、実感したメリットを教えてください。

市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・田村 光由さん (以下、敬称略)
これまでは市原商工会議所に相談に来られる方への対応は、その場限りで途切れてしまうことが多かったです。それが、今回のオーディションでは一つのことが終わったら次のことへと続けていく支援のやり方や、私たちでは思いつかなかったアイデアの提示の仕方などを、千葉日報デジタルさんから学べたことは良い機会でした。

組織的な部分では、継続した支援のスケジューリング、次はこれをやってきてくださいという課題の出し方、設定の仕方はとても勉強させていただきました。これは例えば、相談者の方が補助金の相談でいらした場合でも、逆算したスケジューリングは活きるのではと思います。

市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・松尾 隆大さん (以下、敬称略)
相談者の方と個別でお話しすることは多かったですが、経営やこんなビジネスをやりたいというご希望を、色々な事業者が集まる中で話し合う場はこれまでありませんでした。

特に今回の参加者は業種的にバラバラで、そんな皆さんが何度もディスカッションをする過程で、自分の強みや、それは活かせるのでは?といった意見が飛び交って、その熱量がコミュニティーの形成に繋がったのかなと思います。

加えて、個別相談での千葉日報デジタルさんのアイデアの引き出しの多さにも驚かされました。各々が業種もやりたいことも違う中で、しかも限られた時間内に様々なご提案をしていただき、そういう部分は、商工会議所にはないところだなと実感し、今後取り組んでいかなければならないと感じました。


藤田
市原商工会議所では、年に1度創業スクールというセミナーを実施してきました。しかし、創業計画でフォローできるのは資金調達までで、その後の課題は結局販路拡大です。創業者の方がマーケットという大海原に放り出される中で、私たちには支援する方法が足りていませんでした。

そこを、創業スクールからビジネスオーディションの流れを作ることで、市原商工会議所がバックアップできる体制ができたと思っています。

そのため、私たち職員もこれまでになく、各員が奮闘したと感じます。従来は、職員が決められた業務を各々で行っていましたが、そうではなく“皆でゴールに向かっていく”経験をさせていただけたことは、かけがえのないものだと思います。

 

ビジネスオーディションを皮切りに、市原市に産業の支援拠点を創出


––––ビジネスオーディションは今後も継続予定ですか?

藤田
このスタイルでやりたいです。当初はピッチイベントと呼称していましたが、市原市では時期尚早という気がして、名前を「ビジネスオーディション」に変えた経緯があります。参加者も投資家を募るのではなく、これは交流会の発展系のような“仲間を増やす”イベントです。

この空気感は審査の手法にも表れていて、良し悪しを判断する「審査員」を置くのではなく、会場の皆さんが聞いた後に「興味がある」「もっと聴きたい」と書かれた団扇(うちわ)を上げてもらう評価方法にしました。昔のアイドルオーディションのようなイメージで、これも皆で話し合っている中で生まれたアイデアです。

あまり投資的な側面は出さずに、市原市の地域性を大事にしていけば、次回も多くの方にご参加いただけると考えています。



––––市原商工会議所として、今後力を入れていきたことを教えてください。

田村
千葉日報デジタルさんと組ませていただいたことで、これまでは創業スクールで終わっていた支援方法に次の段階が見えました。そこで、さらに次のステップを考えても良いのではと思います。今回は販路拡大といっても、あくまで市内の事業者の方がメインでしたが、市外、そして県外へと広げていくステップを、私たちが用意できたら意義のあるものになると考えています。

藤田
当所は、市原市とともに、202210月に、サンプラザ市原に産業支援センターのサテライトをオープンさせました。その結果、創業者の方の相談が以前より増加しており、頻繁に行われる小セミナーへの参加者も増えています。この形をこれから継続、拡大させていきたいです。

もちろん、ビジネスオーディションにも引き続き注力して、参加事業者さんには販路拡大、雇用創出とステップを踏んでもらいたいです。そしてその先に、私たちが取り組む表彰制度「市原で大切にしたい会社」にエントリーできるような企業に育って欲しい、これが私の考える未来像です。

松尾
これまで市原商工会議所では単発のセミナーが多かったので、今後もビジネスオーディションのような少人数のコミュニティーが生まれる事業を推進したいです。そうした小コミュニティーをいくつも作って、その方々が産業支援センターを拠点に集まって、ビジネスの話をする流れになれば、この場所も活性化します。

また、産業支援センターをコワーキングスペースとして、今以上に広く利用してもらうことや、少し角度を変えてSDGsの括りで事業者を集めたり、工夫の方法はまだまだあります。あの手この手で幅広い人材を集めて、グループ間の繋がりを促進して、いろいろな事業者さんが日常的に集まってくれる場になればと思います。

––––ありがとうございました。


千葉日報デジタルと市原商工会議所のコラボレーションで進められてきた、創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」。その総決算のイベントが、202210月に開催されたビジネスオーディションです。

多種多様な事業を志す6事業者が、3ヶ月あまりをかけて自らの事業をブラッシュアップし、プレゼンテーションを行いました。

今回は、当オーディションに参加した4名の方にお集まりいただき、プロジェクトへの参加で感じたメリットや、今後の展望を掴むきっかけとなったサポート体制など、ざっくばらんに語っていただきました。

【ビジネスオーディション参加者4名】
Guuu animal chalk art代表・坂本沙矢加さん 《「おもてなしアート」で集客・接客向上》
ライフデザイン事務所代表・村山寛樹さん 《人事の力で業績アップ!》
花澤基工代表・花澤俊之さん 《木こり花澤 山を守る地域密着型SDGsビジネス》
ユニペン代表取締役・石井亮介さん 《日本初、高性能ベビー向け製品を発表!》

 

様々な事業の種と思いを胸に、市原市「市原未来創業プロジェクト」がスタート



––––新規創業者や事業転換者を対象に、20227月から始まった本プロジェクトですが、参加したきっかけを教えてください。

ユニペン代表取締役・石井亮介さん
市原商工会議所さんから連絡をもらった時には、SDGsに関係した企画だと勘違いしていました。行ってみると他の参加者は創業したての方がほとんどで、場違いかなとも思いましたが、皆さんと知り合いになりましたし、その環境で数ヶ月一緒にやってみようと取り組みました。

Guuu animal chalk art代表・坂本沙矢加さん
私は2022年の5月に創業したての時期で、今後市原でどういう活動をすれば良いかを市原商工会議所さんに相談している最中に、「オーディションには色々な方が集まるので勉強になるのでは」とお誘いいただきました。

花澤基工代表・花澤俊之さん
開業のきっかけは、2019年の市原商工会議所さんの創業スクールへの参加です。事業の準備をしていたところコロナ禍に遭って、2020年は営業活動がスムーズにできませんでした。そんな時に、デジタルマーケティングを含んだビジネスオーディションという企画を知って、心機一転して動き始めるには良いポイントになるのでは、と思って参加しました。

ライフデザイン事務所代表・村山寛樹さん
私は2022年にサンプラザ市原で行われた市原商工会議所さんのSDGsのイベントに出席していました。そこで、今後はビジネスピッチも実施すると伺って、これはチャンスだと思い自ら参加をお願いしました。
(※以下、敬称略)

 

活発なディスカッションで得る、自らの強みと弱み

––––本プロジェクトは、伴走型の事業のブラッシュアップが特長でした。ディスカッションも盛んに行われたようですが、参加したことによる気づきやプラス面はありましたか?

花澤
自分の得意な設計技術は、精密板金といった細かい図面を描くことで、そこを打ち出す考えでした。一方で、家業は代々受け継いできた“木を切る技術”です。

これは地元でも需要があって、特殊な技術を持った木こりだという話をしたら、千葉日報デジタルさんからは「木こりで行きましょう!」と後押しがありました。色々な工事の請負をする中で、自分の伐採や木こりの技術をもっと押し出した方がウケが良いのではと、見出していただきました。



坂本
この企画を通して、普通に営業活動をしても絶対に会えない、話す機会がないだろうという業種の方々と知り合えたことが財産です。また、様々なプログラムを一緒に受講する中で、他の業種から見るとこういう部分がビジネス的に活かせるよ、など多くのアドバイスを頂けたことが本当にプラスでした。

石井
当社は塗装、塗料で45年以上やってきた企業で、私は先代を継いで10年近くになります。この企画のために、新しい技術で作った遮熱シートを持ってきました。業界的には今までにない動きで面白いだろうと思いましたが、メディア的には特に目新しさがないと指摘されました。個人的には受ける感触があったので、このギャップはショックでした。

村山
プラス面の一つは、自分の仕事を認知していただけたことです。実際に市原市役所の職員の方に、オーディションの一週間ほど前にSNSでメッセージをいただいたり、元から繋がっている方も「村山って意外に喋れるんだ」と分かってもらえたりといったプレゼン効果があったと思います。

 

千葉日報デジタルによる親身なサポートで、事業内容が先鋭化

 ––––ビジネスオーディション本番に向けては、デジタルマーケティングワークショップ、個別相談、プレゼン対応レッスンと3つの準備段階が設けられていましたが、その期間のサポートで役に立ったことはありますか?

石井
最初のワークショップでは皆で集まって、自己紹介に互いの事業や経歴を発表する場がありました。そこで出てきた話の中から事業の種を深掘りして、その後個別相談に進みます。自分で考えていたアイデアは、遮熱シートを工場の屋根に取り付けるBtoBビジネスでした。

しかし、ワークショップや個別相談の中で、インパクトを踏まえると「BtoCへの転換」だろうと。私たちは95%がBtoBでやってきた会社だったので、これをBtoCに活かすにはどうすべきかを打ち合わせの中で話し合って、ベビーカーへの転用にたどり着きました。自分の考えが変わっていく過程が面白かったです。



坂本
私のチョークアートは手書きで、制作にも時間がかかるため、そもそもビジネスやお金にしづらい職業形態です。2回のワークショップを経た後も、ビジネスへのうまい転換方法が自分の中で見えませんでした。

流れが変わったのは、千葉日報デジタルの方々と個別相談をした後です。雑談のように私の過去の話から今の気持ちまでをフランクに話し、出てきたワードをアイデアとして引き出してもらう中で、徐々にビジネスにできるかもしれない感触が得られました。

特に飲食店や企業受付に設置する「おもてなしアート」を、月額利用で貼り替え対応できる、サブスクリプション型のモデルにしようというご提案は衝撃でした。このアイデアが出た時の「これしかない!」という盛り上がり感は忘れられません。本当に一人だったら思いつかなかったアイデアです。



花澤
自分の場合は業務内容の引き出しが多すぎたようで、最初に千葉日報デジタルさんに「もっと絞りましょう」と言われました。そしてどんどんフォーカスしていって、「切る」だけのプレゼンで8分は長いなと。

そこで自分たちがやっている、ロープで登って木を切るロープアクセスや特殊伐採の手法を、現場で撮った写真を繋いで動画にしようという流れができました。そうすれば話して説明するよりも、皆さんにより理解してもらえます。

あとは、木を切っていますだけで終わらないように、伐採工事の単価設定や森林の継続管理の提案など、ビジネス部分のモデルプランをキャッチボールしながら構築してもらいました。脱線しそうになると、的確に本線に戻していただいたことが印象深かったです。



石井
実際に木の上で作業されている花澤さんの視点で撮った動画は、こんなに高いのかとインパクトがありましたね。デジタル化のおかげだと思います。

村山
花澤さん同様、私もたくさん言いたいことがあったため、内容の取捨選択に感謝しています。皆さんもおっしゃっていましたが、すごく和やかな雰囲気で会話ができて、プレゼンもディスカッション形式で組み立てられたのが、とてもやりやすかったです。

あとは、プレゼンを組み立てる時の考え方なども教わって、自分の武器が増えた実感があります。今回のオーディションの観覧者の年齢層、人数、会場の雰囲気などを踏まえて、いきなり人事支援の内容を説明するよりも「人事の悩みってありますよね」という投げかけから始めるなど、導入部分のレベル感まで緻密にシミュレーションしました。

プレゼンの練習は4日間ありましたが、これが12日間であればおそらくここまで完成していなかったと思います。本当に濃厚で、有意義な3ヶ月間でした。

 

多くの反響を力に変えて、新たなビジネスと地域貢献に踏み出す

 ––––今回の経験を、今後のビジネスにどのように活かそうとお考えですか?

村山
これまでは人事のサービス業、コンサル業と実務の代行をしていましたが、ビジネスオーディションを通して、講師として話すことで自分の価値提供に繋げたい気持ちが芽生えました。

これはプレゼンの考え方やどう相手に伝えるかなど、オーディションで学ばせていただいた知識を使いたいなと思っています。既に営業は始めていますが、その際にもYouTubeのビジネスオーディションのチャンネルリンクを申込書に添付して、活用させてもらっています。



石井
私も本番の模様をYouTube配信で流すなど、デジタルツールを駆使した施策は面白いと思いました。今回の製品ではベビーカーへの取り付けを想定していますが、遮熱剤のメーカーも発表の配信を見てくれていたようで、収縮性や耐久性といった残りの実験には前向きです。

ただし、発表終了後に問い合わせが来たのは屋根に取り付ける方でした。これはある意味、当初の思惑は間違いではなかったということです。お客様に関心を持っていただく目的は達したのかなと、反響自体はとても嬉しかったです。



花澤
オーディションが終わった後に、林業の世界がわかったとか、入り口として勉強になりましたと言ってくれる方がいて、設計ではなく「木こり」でピックアップしてもらって正解でした。それに加えて現在、特殊伐採の世界では挑戦的な若手が全国的に増えています。そういった方々に、チェーンソーで木を切ることを入り口に林業の勉強をしてもらいたいです。

林業は業界的にはニッチなので、特殊伐採をアピールすることで、造園業者の「剪定から伐採へ」の流れが作れればいいなと思います。林業に流入する人材が増えれば森林の整備にもつながりますし、これは少し大きな夢ですが、見放されつつある地方の魅力が再発見、活性化されるのではと期待しています。

坂本
今回のオーディションを通して、私が思ってもみなかったアイデアや、逆に私がやりたかったアイデアの展開を示唆していただき、おかげさまで発表後には何件も手書き看板の引き合いをいただいています。加えて、街を活性化するのに手書きアートをお願いされたり、市原市内の高校で生徒さんたちに教えたりといったお話もいただいています。

私が発表したサブスクリプション型のモデルが広まれば、同じ業界の手書きアーティストさんへの活路にもなると思います。ビジネスに展開していくのと同時に、地域の方と老若男女を問わずに、自由な時間、息抜きの時間になるようにチョークアートを広めていく活動もしたいです。せっかく市原で活動しているので、いただいたアイデアは全て試してみて、地域に還元できれば嬉しいです。

––––ありがとうございました。


木更津市様が2022年度展開するシティプロモーション事業について、千葉日報デジタルが「シティプロモーションサポート事業業務委託」の公募型プロポーザルで受託事業者に決定しました。

木更津市様は今年度、市制施行80周年を迎えるのを機に、デジタルを活用した新たな情報発信を含めたシティプロモーションの強化を進める計画です。

千葉日報デジタルは、新聞社グループの持つ情報発信ノウハウやネットワークなどを活用しつつ、伴走型で木更津市様のシティプロモーション事業のサポートを展開して参ります。