【市原商工会議所:市原未来創業プロジェクト②】市原商工会議所の創業者サポート体制が大きく進化。千葉日報デジタルとの協業で、継続的な販促支援・コミュニティー化支援につなげる

コンサルティング

 

市原商工会議所が千葉日報デジタルと協業して進めてきた、創業者支援の新事業「市原未来創業プロジェクト」。その総決算のビジネスオーディションは、盛況のうちに幕を閉じました。

成功の裏には、マーケティング視点を取り入れた双方向のコミュニケーションや、事業の「核」の可視化を心掛けた取り組みがあったようです。

今回は当オーディションを陰ながらサポートした市原商工会議所の3名の方にお集まりいただき、プロジェクト発足の経緯から、千葉日報デジタルとの協業のメリットまで、お伺いしました。

 

“継続性”を大切に、新・創業支援事業を開始



––––ビジネスオーディションを開始した経緯をお聞かせいただけますか?

市原商工会議所 産業振興部 部長・藤田 智成さん (以下、敬称略)
市原商工会議所は日頃創業支援に力を入れており、過去56年間は、起業家を募ったフェスタや創業スクールなどのセミナー形式の催しを行っていました。

しかし、近年はコロナ禍もあって、地域の経済が停滞して廃業が増えてしまっています。やはり、地域経済の活性化には、創業による新陳代謝をしていかなければならないため、3年前には「創業からの成功ストーリー発表会」を開催しました。

これは創業10年目くらいまでの、業績が伸びている経営者の方に体験談を発表してもらう試みで、発表者のビジネスと私たち商工会議所の取り組みを知っていただく狙いがありました。

結果的にはこれが成功を収めて、こうした発表の場を年間通してできないかと、千葉日報デジタルさんにご相談したことが始まりです。

––––今事業では、単発で終わらない継続性も大切にされたそうですが?

藤田
当初は資金調達のチャンスを提供したいと考えてピッチイベントの開催を予定していましたが、ビジネスパートナーを集めるだけでは単発で終わってしまう懸念があったため、議論を重ねた結果、しっかり前準備を整えられるオーディション企画の流れを考えました。

商工会議所の業務と言うのは会員の経営者を事務的にサポートすることが多いです。手続きが終われば段々と関係が薄れてしまう、この習慣を変えていかなければならないぞと。そこで、段階を踏んで参加者を成長させて、仲間意識を醸成する、「交流会+発表イベント」のイメージで構築しました。

 

デジタルを駆使した販路拡大&人材育成スキル、千葉日報デジタルと組んだわけ


––––ビジネスオーディションを進めるにあたり、千葉日報デジタルと連携された狙いはどこにあるのでしょうか?

藤田
私たちは事務的な対応を得意にしている反面、販路拡大スキルは不得手です。そこで外部の手を借りようとなった際に、広告宣伝のメディアと組みたいと思いました。

ちょうど時を同じくして、千葉日報さんが新会社である「千葉日報デジタル」を立ち上げるとお聞きして、これはぜひお願いしたいと思いました。

実は他にも数社の候補がありましたが、やはり人材やビジネスを育てていこうという「公共性」、さらに今後DX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されるビジネス環境の中で「デジタルマーケティング」の部分で非常に知見をお持ちですので、最終的に千葉日報デジタルさんにお願いすることにしました。

––––具体的に印象に残っているサポートはありますか?

藤田
千葉日報デジタルさんからは、最初の頃の打ち合わせで、「単発のセミナーを辞めましょう」、「もう少し相手の事業を深掘りできる事業をしませんか」とご提案いただいてこの話が始まりました。ここは自分たちでも課題に感じていました。

今回はビジネスオーディションというゴールがあって、それに向けて何が必要かを探る過程で、(1)デジタルマーケティングワークショップ、(2)個別相談による事業磨き上げ、(3)プレゼン対応レッスンという三段階の流れが確立されました。

これも千葉日報デジタルさんのご提案です。こうしたイベントを実施するにあたって、長期計画を練る経験が私たちには足らなかったため、ゴールから逆算した様々な段階を設定いただけたことはありがたかったです。

 

事業拡大に向けた、市原商工会議所のバックアップ体制が進化



––––千葉日報デジタルとの協業で、実感したメリットを教えてください。

市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・田村 光由さん (以下、敬称略)
これまでは市原商工会議所に相談に来られる方への対応は、その場限りで途切れてしまうことが多かったです。それが、今回のオーディションでは一つのことが終わったら次のことへと続けていく支援のやり方や、私たちでは思いつかなかったアイデアの提示の仕方などを、千葉日報デジタルさんから学べたことは良い機会でした。

組織的な部分では、継続した支援のスケジューリング、次はこれをやってきてくださいという課題の出し方、設定の仕方はとても勉強させていただきました。これは例えば、相談者の方が補助金の相談でいらした場合でも、逆算したスケジューリングは活きるのではと思います。

市原商工会議所 産業振興部中小企業相談所 副主査・松尾 隆大さん (以下、敬称略)
相談者の方と個別でお話しすることは多かったですが、経営やこんなビジネスをやりたいというご希望を、色々な事業者が集まる中で話し合う場はこれまでありませんでした。

特に今回の参加者は業種的にバラバラで、そんな皆さんが何度もディスカッションをする過程で、自分の強みや、それは活かせるのでは?といった意見が飛び交って、その熱量がコミュニティーの形成に繋がったのかなと思います。

加えて、個別相談での千葉日報デジタルさんのアイデアの引き出しの多さにも驚かされました。各々が業種もやりたいことも違う中で、しかも限られた時間内に様々なご提案をしていただき、そういう部分は、商工会議所にはないところだなと実感し、今後取り組んでいかなければならないと感じました。


藤田
市原商工会議所では、年に1度創業スクールというセミナーを実施してきました。しかし、創業計画でフォローできるのは資金調達までで、その後の課題は結局販路拡大です。創業者の方がマーケットという大海原に放り出される中で、私たちには支援する方法が足りていませんでした。

そこを、創業スクールからビジネスオーディションの流れを作ることで、市原商工会議所がバックアップできる体制ができたと思っています。

そのため、私たち職員もこれまでになく、各員が奮闘したと感じます。従来は、職員が決められた業務を各々で行っていましたが、そうではなく“皆でゴールに向かっていく”経験をさせていただけたことは、かけがえのないものだと思います。

 

ビジネスオーディションを皮切りに、市原市に産業の支援拠点を創出


––––ビジネスオーディションは今後も継続予定ですか?

藤田
このスタイルでやりたいです。当初はピッチイベントと呼称していましたが、市原市では時期尚早という気がして、名前を「ビジネスオーディション」に変えた経緯があります。参加者も投資家を募るのではなく、これは交流会の発展系のような“仲間を増やす”イベントです。

この空気感は審査の手法にも表れていて、良し悪しを判断する「審査員」を置くのではなく、会場の皆さんが聞いた後に「興味がある」「もっと聴きたい」と書かれた団扇(うちわ)を上げてもらう評価方法にしました。昔のアイドルオーディションのようなイメージで、これも皆で話し合っている中で生まれたアイデアです。

あまり投資的な側面は出さずに、市原市の地域性を大事にしていけば、次回も多くの方にご参加いただけると考えています。



––––市原商工会議所として、今後力を入れていきたことを教えてください。

田村
千葉日報デジタルさんと組ませていただいたことで、これまでは創業スクールで終わっていた支援方法に次の段階が見えました。そこで、さらに次のステップを考えても良いのではと思います。今回は販路拡大といっても、あくまで市内の事業者の方がメインでしたが、市外、そして県外へと広げていくステップを、私たちが用意できたら意義のあるものになると考えています。

藤田
当所は、市原市とともに、202210月に、サンプラザ市原に産業支援センターのサテライトをオープンさせました。その結果、創業者の方の相談が以前より増加しており、頻繁に行われる小セミナーへの参加者も増えています。この形をこれから継続、拡大させていきたいです。

もちろん、ビジネスオーディションにも引き続き注力して、参加事業者さんには販路拡大、雇用創出とステップを踏んでもらいたいです。そしてその先に、私たちが取り組む表彰制度「市原で大切にしたい会社」にエントリーできるような企業に育って欲しい、これが私の考える未来像です。

松尾
これまで市原商工会議所では単発のセミナーが多かったので、今後もビジネスオーディションのような少人数のコミュニティーが生まれる事業を推進したいです。そうした小コミュニティーをいくつも作って、その方々が産業支援センターを拠点に集まって、ビジネスの話をする流れになれば、この場所も活性化します。

また、産業支援センターをコワーキングスペースとして、今以上に広く利用してもらうことや、少し角度を変えてSDGsの括りで事業者を集めたり、工夫の方法はまだまだあります。あの手この手で幅広い人材を集めて、グループ間の繋がりを促進して、いろいろな事業者さんが日常的に集まってくれる場になればと思います。

––––ありがとうございました。

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