大崎コンピュータエンヂニアリング(OCE)は、東京都に本社を置くシステム開発企業です。千葉県内54自治体に導入済みの総合行政ネットワーク「LGWAN」からのシステム提供をはじめ、千葉県を中心に、行政や企業向けの業務システムや情報通信インフラの構築を多数手掛けてきました。
近年では、コロナ禍で生じたテレワーク需要や国が進めるデジタル化の施策を受け、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に力を入れています。
千葉県の自治体がDXを推進するために、OCEがどのような形でサポートを行っているか――。現場を指揮する公共DX推進部長の薄井直毅さんに、自治体DXの最前線を伺いました。
■市民サービスの向上を目指し、総合的なDX化を提案
––––千葉県の自治体向けにどのようなDXサービスを提供されていますか?
公共DX推進部長・薄井直毅さん(以下、敬称略)
国がDXの全体計画を作って各自治体に推進を奨励している現状を踏まえ、当社ではその方針に沿って業務を進めています。
具体的には、市民が自治体に何か申請する際に、これまでは直接窓口に出向いて、そこで用紙等に記入することが一般的でしたが、今は皆さんがスマートフォンをお持ちでインターネット環境があるため、そこから申請できるような仕組みづくりを行っています。
さらに、自治体業務を電子化するには、データを安定的に流通させるシステムも必要なため、アクセスに関わるネットワーク機器やインフラ部分の導入にも積極的に関わらせていただいています。
––––自治体向けのDXで特に意識している部分はどのような部分ですか?
薄井
お客様である自治体からは、「窓口機能を順次デジタル化してほしい」「システムを入れた後の運用面も含めて周辺環境をデジタル化してほしい」といったご要望が多いです。
こうしたご要望にお応えするため、「当社のサービス提供を通じて市民サービスの向上を果たす」ことを念頭に、各種サービスの提供を行っています。
市民の方々がストレスなく行政サービスを利用するには、バックオフィスなど裏方業務の改善も必要です。そうした裏方業務のDXも一手に引き受け、総合的なデジタル化を目指しています。
システムの入り口部分を電子化しても、その後の工程で、結局紙で印刷する状況が生まれては元も子もありません。そうならないように、お客様個別の優先課題を把握しながら、トータル的なご提案を差し上げています。
––––自治体DXの分野でOCEの強みはどこにあると考えますか?
薄井
お客様が要望されるDXの切り口はさまざまで、全システムに関わるエンジニアから、ネットワーク部分の技術者、配線周りから構築する施工部門まで、全員の力が必要なことが多いです。こうした通信だけでなく、施工部分までサポートできるのは私たちの一番の強みだと思っています。
加えて当社にはデータセンターもありますので、大企業にはないスピード感を持って、情報・通信環境の整備から保守・運用面まで、総合的に課題に向き合うことが可能です。
■現場の課題を解決し、DXの真の価値を示したい
––––お客様からの反響で印象に残った声はありますか?
薄井
コロナ禍において、市民の方々が在宅勤務の自治体職員とコミュニケーションを取るには電話かメールだけにツールが限られていました。それが、最近では自治体向けのチャットツールの導入で、今まで以上に円滑なコミュニケーションが取れるようになった例があります。
また、会議を例にとっても新規のコミュニケーションツールの導入で、打ち合わせの質が上がったり、一箇所に集まらなくても十分に情報共有ができたりと、自由度が高まったことで、とてもお喜びいただいた経験があります。
お客様からこうしたお声を頂戴すると、DX化の真の価値は現場の課題解決にあると強く感じます。
当社では、自治体向けに「自治体ジャーナル」という情報誌を発行しています。そこでは先ほどのチャットツールの話など、お客様にヒアリングした導入効果の話題を事例として掲載しており、自治体の課題解決のお役に立てるよう情報共有しています。
––––顧客とのつながりを強化するために、どのようなことに取り組んでいますか?
薄井
当社は本社が東京ですが、お客様である自治体とのつながりは千葉県内が多くあります。また、コンピューターや通信関連のシステムを構築してサポートするのは得意分野ですが、「情報発信」に関しては自治体向けの情報誌を内製してはいるものの、ほぼ手探り状態です。
そこで2022年から千葉日報デジタルさんとタッグを組んで、情報発信の方法やホームページの活用法など、さまざまにご指導いただきながら取り組みを進めています。
当社のお客様の成功事例や有益な情報を上手に届けられるようにするには、まだ多くの学びが必要だと考えています。そこはメディアの知見があり、地元密着かつデジタル領域に詳しい千葉日報デジタルさんの強みを生かしていきたいと思います。
––––自治体のDX推進について、OCEとして将来の展望を教えてください。
薄井
自治体DXの実現は、自分たちだけではできません。現在、ITやシステム関連業界では、さまざまな新しい技術やソフトウェアが日々開発されていますので、それを自分たちの会社にも取り込んで、新しい事例に向き合いたいと考えています。
これまで自治体の中だけでの課題解決はなかなか難しい面がありましたが、民間の技術や知見をうまく組み合わせることで、自治体や市民の皆さんの生活が、より豊かになるDX実現のお手伝いをしていきたいです。