【袖ケ浦市】若手のアイデアをシティプロモーションに活用。ショート動画企画「袖が裏チャレンジ」成功の舞台裏

コンサルティング
シティプロモーションの強化に取り組む袖ケ浦市では、若手職員の広い視野と柔軟な発想をシティプロモーションに生かすべくプロジェクトチームを発足させています。2023年度に取り組んだのはその名も「袖が裏チャレンジ」。「袖を裏返すポーズ」をショート動画で投稿する斬新な企画でした。チームの一員として企画を推進してきた秘書広報課主任主事の柿本健さんに、取り組みのきっかけや専門家によるサポート、今後のプロモーションの方向性などプロジェクトを振り返っていただきました。


(袖ケ浦市 秘書広報課 主任主事 柿本 健さん)

若手主体の動画企画を、第三者的視点でブラッシュアップ

––––今回の動画企画の概要を教えてください。
企画政策部秘書広報課 主任主事 柿本 健さん(以下、敬称略)
「袖が裏チャレンジ」と銘打った今回の動画企画は、地名と同じ響きの「袖を裏にする」ポーズをする様子をスマホ等で撮影して、SNSに投稿することで参加できます。2023年度のプロモーション計画では、当初袖ケ浦市の強みを押し出そうとしましたが、なかなかピンとくるものがなく、では逆に弱みはと考えると、知名度が低いことだと思いつきました。そこで、まずはネームバリューの向上を目的に、ショート動画を使って拡散を狙ったプロモーションを行うことになりました。

今年度のプロモーションを担うメンバーは7名です。やはり市のプロモーションは担当課だけでなく、全庁的に行う必要がありますし、時流を捉える情報感度も重要です。そのため、普段は廃棄物処理や庁内のシステム管理、自治会との調整など、シティプロモーションとは直接関連しない業務を担当する、20~30代の若手職員で庁内横断的にチームを編成しました。各々の幅広い経験、年齢層の異なる人間がざっくばらんに意見を交わせる点がメリットだと思います。


(「袖が裏チャレンジ」のTikTok動画)

––––「袖が裏チャレンジ」実施までの、具体的な流れを教えてください。
柿本 施策を検討する中で動画をメインに据える形は比較的早く決まりましたが、難航したのはその中身です。プロジェクトメンバー全員で何度も企画会議をしましたが、当初は良いアイデアが浮かばず、先行きが不安な時期もありました。突破口になったのは、何回目かの会議であるメンバーが、過去に袖ケ浦海浜公園で「同時に袖を裏返した人数」で、ギネス記録に挑戦していたイベントのことを思い出したことです。袖ケ浦市にちなんで「袖を裏返す」という分かりやすさと、ネームバリューに直結する動作、動画への収まりやすさに、メンバー皆が「これだ!」と直感したように思います。

企画の拠り所を見つけたあとはスムーズでした。動画の内容はこちらから一方的に発信するのではなく、コロナ禍に流行ったバケツリレーチャレンジのように、一般の方が代わるがわる動画を投稿してもらう形式が相応しいと判断しました。さまざまな人に参加を促すことで何本もチャレンジ動画が投稿されますし、多方面から名前が売り出せるのではと、今回の「袖が裏チャレンジ」のスタイルが誕生しました。


(「袖が裏チャレンジ」のやり方を紹介するYouTube動画)

––––今回の動画企画では新しい試みもされたそうですが?
柿本 プロジェクトメンバーは毎年4月に入れ替わるため、その意味では、常に新鮮な気持ちで企画に挑戦していますが、2023年度は7月に千葉日報デジタルさんと「情報発信に関する連携協定」を結んだことが大きな変化です。連携協定は袖ケ浦市が行う情報発信にプロの視点を加えることで、プロモーションの強化につなげる狙いがあります。その一環として、今回の企画では、プロジェクトチームの会議にオブザーバーとして参加し、助力いただきました。

例えば、当初動画企画の内容は、市の良いところをアピールする従来路線でしたが、そこで千葉日報デジタルさんが「SNSに出ている自治体の広告は、街の名前を隠したらどれも同じで個性がない」と提言されました。すると、皆が素直にそうだよねと受け止めて、そこから今までのやり方を変えて、弱みを見せたらどうかという方向性が生まれました。こうした通年のプロジェクトは、庁内で従事する職員はだんだんと視野狭窄になりがちです。しかし、第三者が引いた視点で見て、会議のたびに「こういうことですよね」と整理してもらえると、目的や方向性が常にクリアになる点が良かったです。

加えて、動画制作についてもテロップや構成などを一つのパッケージとして意識する、リリースは、まず動画コンテンツという受け皿が揃った段階で打ち出すなど、細やかなアドバイスをいただきました。そのおかげもあって、「袖が裏チャレンジ」ではプロモーション全体の統一感や継続性が保てています。私たちが船を動かす船員だとすれば、千葉日報デジタルさんはその水先案内人として、プロジェクト自体を、どんどん良い方向に進めてくださる感触がありました。


(若手職員のチームに千葉日報デジタルが加わり「袖が裏チャレンジ」の動きを検討していった)

圧倒的な反響を追い風に、一体感あるプロモーションを目指す

––––動画企画の反響はいかがでしょうか?
柿本 私がこれまで手がけたプロモーションの中では、最も多くのメディアから問い合わせをいただいています。実際にテレビや新聞媒体への露出が増えていますし、動画自体も40本以上投稿していますが、全て数万再生とかなりの手応えを感じています。

また、庁内的な話では、過去にもSNSで子育て世代の方をメインターゲットに袖ケ浦市のPR広告を出したり、品川駅にデジタルサイネージを掲出したりと、シティプロモーション施策にはかなり力を入れていました。しかし、自治体色が強い硬派なプロモーションが主体だったことや、効果が目には見えなかったこともあり、あまり庁内との一体感を持てていませんでした。ところが、今回のチャレンジでは、若手職員のアイデアが十分に活かされて、プロモーションの雰囲気がガラッと変わりました。おかげで先輩方や他部署の方からも、面白いこと考えるねと、称賛の言葉を多数いただきました。若手職員にとっては、自分たちの取り組みに反響があることが励みになっていると思いますし、シティプロモーション全体としても、アイデアで勝負できたことが自信につながっています。


(柿本さんと袖ケ浦市マスコットキャラクター「ガウラ」)

––––今回の動画企画を踏まえて、今後取り組みたい市のPRはありますか?
柿本 動画プロモーションの強みを実感したため、動画広告は袖ケ浦市の未来への投資として、戦略的に実施していきたいと思っています。最近は市長が市政を紹介する動画を作ったり、千葉日報デジタルさんの協力で情報発信力を高める取組ができたりしているので、情報発信の質だけでなく経路も強化していきたいです。

また、「袖が裏チャレンジ」に関しては、撮影自体は想定以上に順調にできましたが、そこから先の、動画を見てリレー形式で投稿する動きになかなかつながっておらず、2024年度以降は、動画投稿でインセンティブがつくような仕組みづくりが必要だと考えています。「袖が裏チャレンジ」はようやく火がつきはじめたところなので、袖ケ浦市民が撮影する時は、袖まくりのポーズが定番というくらいのムーブメントを作り出せるように、継続して盛り上げていきたいです。
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